「ハクメイとミコチ(TVアニメ動画)」

総合得点
76.5
感想・評価
402
棚に入れた
1592
ランキング
706
★★★★☆ 3.8 (402)
物語
3.7
作画
3.9
声優
3.8
音楽
3.7
キャラ
3.8

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フィリップ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9
物語 : 4.0 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 3.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

ささやかな楽しい人生の歩き方

アニメーション制作:Lerche、
監督:安藤正臣、シリーズ構成:吉田玲子、
脚本:吉田玲子・大河内一楼・國澤真理子、
キャラクターデザイン:岩佐とも子、
音楽:Evan Call、原作:樫木祐人

森の奥深い場所。
大楠の幹を利用した家に
身長9㎝のこびと、ハクメイとミコチが住んでいる。
How to walk tiny little life.
ここには、ささやかな人生の歩き方がある。

大人が楽しむためのファンタジー。
世界観は特殊な設定で、
リアリティを重視する人には合わないかもしれない。
虫や動物もこびとと同じように暮らし、
言葉を交わすことができる。
ただし、魚や鳥は話すことができない。
森に住みながらもこびとや動物たちは、
ほぼ現代人と同じような文明を持っており、
お洒落なインテリアや多彩な食文化を楽しむ。
スペイン階段やトレビの泉のような景観のある
ローマのような趣きの街もある。
場所によっては、鉄道も開通している。
人間が小さくなって、豊かな自然を享受できる、
文明の発達した世界。
肉は食べるが、動物たちと仲が良い。
これらをファンタジーとして受け入れることができれば、
作品を大いに楽しむことができるだろう。
よく考えると、現在の人間のスタンスと
ほとんど同じような感覚かもしれない。

そもそも作品の起点は、作者の「面白いこと」。
それを掘り下げていかに表現するかが、
重視する点で、多少の矛盾点には目を瞑るという
考え方が貫かれている。
だから、作者の樫木祐人が「面白いこと」を
想起できるまでは、作品に取りかかれないそうだ。

食と酒、趣味、そして仕事。
伝説や付喪神、不思議な科学技術も加わる。
その一つひとつがとても楽しい。
とはいえ「仕事」については厳しさも感じさせる。
ハクメイは建築関係の職人、
ミコチは料理の専門家で店に販売している。
ふたりともきちんと職を持っており、
そのことで苦しむこともあるが、
仕事をする喜びが表現されている。
美容師や歌手、建築の棟梁も登場する。
この作品は、可愛いこびとや動物たちによる
人生における大切なことが綴られている

そんななかで重視されているのは、
やはり、食と酒だ。
ミコチが作る料理は、どれも美味しそうだし、
酒もなかなか魅力的。
レモンを使ったリモンチェッロという
イタリア原産のリキュールが作品内で出てくる。
レモンの果皮をスピリタスなどの蒸留酒に漬け込み、
シロップを加えて作る甘い味わいの酒。
飲んだことがなかったので、つい取り寄せてしまった。
アルコール度数が30度ほどあるが、
炭酸などで割れば、女性でも美味しく飲めるだろう。
ロックで飲むのもまた良し。

アニメーションの演出は、
サイレント時代の映画を意識した
時おり字幕が表示される手法。
これが作品全体を彩るひとつの味になっている。
そして忘れてはいけないのがOPアニメーション。
Chimaの柔らかで気だるいような歌声がとても合っている。
歌い方や名前が似ているCharaをどうしても想起させるが、
さらに透明感を増したような雰囲気。
調べてみるともう10年も活動しているようだ。
そんな彼女の歌声に自然の映像や象形文字のような
クレジットが溶けるように表現されている。
作品全体をとても上手く表現している。

薄明と美東風(ハクメイとミコチ)。
この作品を観ていると、
心にゆっくりと光が射し込み、
気持ちいい風が吹いてくる。
(2020年9月13日初投稿)

投稿 : 2020/09/13
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