砂粒と嵐 さんの感想・評価
3.5
物語 : 5.0
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.0
キャラ : 2.0
状態:観終わった
世界観のおもしろさとキャラのつまらなさ
前半のノリがほんとにきつい。この文化に慣れ親しんできた人にとっては堪らないものなんだろうと思うけど、キャラも発言も寒い。話がめちゃくちゃ面白いということは知っていたので、面白くなってくるまで我慢しよう、、、と思っていたけどとにかく展開が遅くて退屈だった。
世界線やタイムマシンに関する設定はかなりちゃんとしているので、わくわくして面白い。
キャラクターを受け入れられるようになったのは最後の3話ぐらい。やっぱりギャルゲーなので女性キャラそれぞれのルートが用意されていて、みんなやたらめったら理由もなく岡部に惚れていくし、岡部もよくあるハーレム系の主人公と同じ感じかなーと思って、私は完全に警戒心をガッチガチにしていたのだ。実際女の子たちもつねに客体化前提の恋愛描写だったのでしんどかったし、、、。
しかし牧瀬とのキスシーンのところで、ようやく私は岡部倫太郎を認めることができたなと思う。
「何度も衝突した。互いに憎まれ口を叩き合った。相談しあったりもした。追い詰められた俺が助けを求めたのは紅莉栖だった。俺の話を黙って聞き、信じてくれたのは紅莉栖だった。18歳で学術誌に論文がのった天才少女は、つねに冷静で強がりで、プライドが高くてお節介で、根は真面目すぎるほど真面目で、俺はいつだって、彼女の語る理論に痺れて、彼女の言葉を胸に刻み込んで、彼女の動きを目で追っていた。単なる仲間じゃない。俺にとって牧瀬紅莉栖は、、、」のあたりで、ここまで紅莉栖を理解した上で、また自分の愛の内実をきちんと自覚している岡部のことを、私は完璧に信頼することができた。彼女へのリスペクトがまずあって、その上で男としての恋心がある、ということが明確に見えたのも大きかった。この両面がちゃんと伝わってくる告白シーンっていうのは貴重だ。
「ダイバージェンス1%を越えて」という言葉がほんとに切なくなるぐらい好き。
肉体が移動しなくとも記憶を送ることでタイムリープできる、という仕組みは納得できるし、世界線が移動できるものであることが面白い。
例えば時をかける少女なんかみたいな「世界線は無数にあって、それぞれがパラレルワールドである」という世界線解釈では、「世界を変える・人類を救う」というドラマに持ってくことはできないもんなぁ。
どこ時空かわからない、夢みたいな抽象的なシーンがたびたび挟まるのも良かった、時空の遠くで君を思うというドラマ、、
最後の3話がほんとに堪らなく好き。
「このキャラだからこそいい」っていう意見が大半だけど、私はみんながもう少し愛せるキャラだったらもっと楽しめたかな、と思ってしまう。
というのも、どのキャラにもあまり主体性が見えない。
「オタク」とか「メイド」とか「厨二病」みたいな属性をなぞった空っぽの人格。人間味がなく、非現実的に浮遊した存在である。私は属性を愛でたりしてキャラを客体的に愛すのではなく、感情移入とか自己投影して愛すタイプなので、好きになりようがなかった。
ダルはあれで全然気持ち悪くもウザくもないのがすごい。絶妙だと思う。かわいい。
一番胸糞なのは中鉢教授。クソみたいなプライドと、毒親っぷりと、見え透いた女性蔑視がきつい。あれは殺意を抱く。
まゆしぃにはちょっとついていけませんでした。幼馴染!ふわふわ!庇護欲!天然!みたいな記号の集合体にしか見えず、あれだけ時間をかけて描かれているにもかかわらず全然好きになれないうちに、死にまくるパートに突入してしまった。まゆしぃだけが不思議と物事の本質が見えている、みたいなシーンはまあ、なんとなく説得力はある。
萌郁もまじでよくわからなかった。どこから声出してるんだろう。暗くて不気味でエロい美人でメンヘラ枠、というそれだけ、そういう情報を伝えてくるだけで、本当にそれだけ。
鈴羽はもうちょっと、好きになりたかったなあ。岡部と絡むとすべてダメになる。
フェイリスはいちばん、不気味なくらい気持ちとか感情にリアリティがない。いつ何時も、悩む時でさえメイドキャラを徹底してるので萌えキャラの鏡とも言える。
ルカ子は、これに萌える人がいるってことはよくわかる。しかし、本当の女の子になったらなったで僕っ娘なの、どういうこと?ガバガバやんけ、、と気になってしまった。要するに、漆原というキャラがどういう葛藤を抱えていて願いが叶ったらどうなるか、ということよりも、女の子なのに男の子なのに女の子!?みたいな、性別があやふやなキャラに抱く尊さ感情に主眼が置かれているからああいう描写になるんだと思う。
牧瀬紅莉栖ちゃんは本当にかわいい。ツンデレキャラをあてがわれているのにも関わらず、微妙にタレ目でやる気がなさそうな顔をしてるのが意味不明でかわいい。そして何より、キャラとしての主体性が一番あって、自己投影できる。
でも、だからこそ、大事な紅莉栖ちゃんが単なる「ツンデレ萌えキャラ」の典型のようなリアクションを強いられたり、あれほど天才なのにストーリー上ほどよく愚かであることを求められたり、「男の人に急に怒鳴られて怖い、、、」みたいなセリフを言わされている意図に気付いてしまうと、我慢ならないくらい悲しくなってくるのだ。そしてこれはきっと私が女だからだけど、いろいろ抱えてる紅莉栖ちゃんが男(岡部)にしか弱みを見せないということが、(ギャルゲーだから至極当たり前のことなのに)とても寂しかった。
ストーリーが面白すぎるので、ギャルゲゆえの「人間関係を描いてなさ」が逆に目立って幻滅してしまう、という感じだったんだと思う。でもそれは、単に私向けコンテンツではないというだけの話にすぎないので、シュタゲが面白くないことの理由にはならない、ただ自分に合わない部分のあっただけだ、という感じでした。