時雨 さんの感想・評価
4.7
物語 : 4.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 4.5
キャラ : 5.0
状態:観終わった
心に残る最高のアニメ
原作をここまで昇華させた作品を初めて見ました。プロのアニメーターが本気でいい作品を作ろうと、情熱を、心血を注いだ結果生まれた作品だと思います。
特に演奏シーンは圧巻!とてつもない熱量を感じ、体が熱くなります!アニメーターの熱意がそのままに伝わってくるようです。
作画・構成・背景など、すべての質が高いですが、それらを全部ひっくるめて「演出がすごく良い」と言いたいです。この演出こそが、原作を最高の作品に昇華させたのだと思います。
演出が素晴らしいからこそ、回を重ねてどんどんその世界に引き込まれていきます。確かによくあるストーリー展開ではありますが、その演出に引き込まれ、世界に没入していくと、違うものを感じるようになります。
それは主人公達の呼吸です。絵の構図や背景の色使い、台詞の間でそれぞれのキャラの気持ちが分かるようになり、この作品の登場人物一人一人に血が通っているように見えてきます。そうなってしまったらもう全話が神回です。登場人物の台詞一言一言に重みがあり、表情の一つ一つに意味を感じます。無駄なシーンなんて一切ないんだと気がつきます。そこから最後まで涙が止まらなくなります。
最初は宮園かをりを薄っぺらく作り上げられたヒロインだなと思いました。でも、それもそのはず。彼女の背景こそがこの物語のカギであり、伏線を張りつつ、徐々に明らかにする必要があったのです。
すべてを知り、もう一度作品を見直すと、彼女の人間性の深さが分かります。
出会った公園で公生が見た涙の意味、自分の演奏の感想を公生に聞いた時に手が震えていた理由、椿に公生を伴奏者にしていいか確認した時のらしくない仕草。
そこには、公生と一緒に演奏したいという夢。人々の心の中に生き続けたいという願い。自分の体が動かなくなっていく恐怖と、生きることへの諦め。椿に対する後ろめたさ。重ねる嘘の代償。そして公生への想いが、彼女の言動の背景にあったのだと思いました。
薄っぺらいヒロインだと思っていた彼女は、複雑な感情の中で、多くの葛藤を抱えている人間でした。
ここからは主観ですが、公生とかをりの恋は、愛したいとか愛されたいとかいう類のものではないと思いました。公生は自分の心の中のスクリーンにまっすぐ彼女を映し込んでいき、かをりは彼の心の中で生き続けたいと願い、何度も何度も彼の心の中に写り込もうとしたんだと思います。
それぞれ別の意味での「好き」という感情を持った2人の心は近づいて、最後には繋がってしまったんじゃないかと思ってます。「僕(私)の中に君がいる」。
恋愛というものは実は人それぞれで、形なんてない。言葉で表現することは不可能だけど、この2人の恋愛はこういうものだったんだな、と思いました。
さて長々と書いてしまいましたが、この作品は素晴らしい!というか美しいです!かをりの存在も相まって、桜のイメージがピッタリの作品です!
心に残る名言が作中にあふれており、忘れられない作品になりました!
ありがとう!