7でもない さんの感想・評価
3.6
物語 : 3.0
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
1963年を生きるインテリゲンチアな青年達の素直で軽いラブコメ
35行2000文字程度感想雑文
5.2稿目
◇けなげなヒロイン
◇まっすぐさ
◇暖かい眼差しでオタクがかっこよく描かれてる
◇作画
◇うすしお味
◇まとめや細かい疑問等
◇けなげなヒロインと予想したが
イメージイラストから第一次~第二次大戦設定で軍艦乗りの彼氏を待つ少女の暗い話と思って身構えてたらぜんぜん違って軽い恋愛青春譚で拍子抜けした。畑に里芋とか植えたり、竹槍で国土最終防衛戦の為の訓練とか鬼畜米軍との諍いとかないんだ
◇まっすぐ
このアニメはとにかくみんな素直で真っ直ぐで可愛らしい。屈折や躊躇いや回りくどいことは殆どない。
感情が高ぶると自然と皆で合唱し(校長への健全な学生アピール・演出もあるし、むしろそういうシーンの方が多いか。でもいいや)、文化部部室棟カルチェラタンに改装が必要と見ると次の日には集団で乗り込んで掃除をする。ジブリアニメにありそうな「ここは男の砦だ。俺達に任せておけばいいんだ(フンッ)」「馬鹿ね。アンタ達に任せてたらいつまでたっても片付かないわよ」みたいな男VS女の(プロレスのアングル的な)闘いも無く、仲良く掃除する。取り壊し取り消しについて校長と話しても拉致があかないと見ると東京の理事長の所へ意図的にアポを取らずに押し掛ける(関係ないけど待たされるシーンの緊張感といらだち、ぬか喜びが入り混じった感じが非常にリアルで苦笑した)。
特に理事長を迎える時に恥じらったり奇をてらったりせず正面から正々堂々と、全員で並んで迎え、歓迎のメッセージを掲げて、校歌を歌って迎えたのは良かった。中々あの年齢でできる事じゃないよ。あんな出迎えをされたら竹を割ったような性格の理事長じゃなくてひねくれたおっさんだとしてもぐっとくるよね。
風間とメルが相合傘で下校する時もその時は自分の妹だと信じきっていたのに去り際にメルの手をぐっと引き寄せて恋人ムーブをするシーンもそんなストレートさが溢れた1シーン。しかし妹をぐいっと引き寄せる兄ってどうなんだろう。押し殺した感情が爆発しちゃったのかな?
まっすぐと言えばメルの妹の空ちゃん(ちなみに中の声優は白石晴香 a.k.a. アシリパ、ローニャ、高梨ミーシャちゃん、切絵ちゃん、文乃(理系)役)。作品冒頭で屋根からの飛び込みパフォーマンスをした風間に憧がれて次の日には男だらけの魔窟のようなカルチェラタンに突撃し、サインを貰い、貰ったすぐ矢先に風間から水沼に切り替えそしてその後は事あるごとにちゃっかり水沼のすぐ横にいる辺りミーハーかつ欲望にストレートすぎると思った。空ちゃん、恐ろしい子。
◇暖かい眼差しでオタクがかっこよく描かれてる
哲学や文学、化学等に熱くなって語り合い、「カルチュラタン」や後述の「メル」、「ラメール」みたいなおフランス語で気取る彼らはオタクっぽいけどポジティブで暖かい眼差しで描かれ、オタクをやる事に後ろめたさや気恥ずかしとかは無縁で少し羨ましいと思った。またなんとなくアフターヌーンで連載されていた漫画、ディスコミュニケーションを思い出した。(5稿目加筆)そういえば映画Ready Player Oneを見て、なんか80年代やビデオゲームナードを美化しすぎじゃね?こんな持ち上げたり美しく描くようなものだったっけ?って思ったのを思い出した。
◇作画
作画について思った事数点。深夜アニメと比べると色も非常にベーシックだし、キャラデザもシンプルなんだけど、メルちゃんや空ちゃんのちょっとした表情がなんかかわいい。メルは週5で下宿の7人分の食事家事をする事からわかるような性格で、真面目というか案外表情が硬いシーンが多いんだけど、硬いからこそ表情が柔らかくなる時うれしい。
他に作画で気になったのは船のシーンの動きが良い所とか、メルが朝校門に入るシーンでメルが右奥から近寄ってきて、徐々に右に回転していってから左奥の校門に入るまでをワンカットで回転する所をアニメートしている所。テレビアニメだと横に歩くシーン、校門を超えるシーンみたいに2-3カットの簡単な動きに分解するのに、妙な所に力を入れるんだなあって思いつつ2-3回見直してしまった。
最初カルチュラタン訪れるとき等に主人公たちが話し合ってる間に周りのモブ部員達が騒いで動いてるのが気持ちよい。画面に複数以上の動きが独立して動いてる動画演出は豪華な感じで好き。純粋に2倍の作画手間だろうしタイミング調整とか大変なんだろうけど、劇場版マクロス愛覚えていますかのクライマックス寸前で画面手前で言い争っているミンメイと一条光のバックグラウンドでVFが頭部に?ビームを食らい破壊されるシーンとかも好きだった。うん、好き。
またこのアニメでは風間が実用車に乗るシーンが結構多く力が入ってた。ジブリやデミジブリアニメでは個人的には魔女の宅急便のトンボが羽を付けた自転車でカーブのついた坂を駆け降りて飛ぼうとして失敗して転げ落ちるシーンや、アリエッティ(まちがい。メアリと魔女の花のメアリ)が森に自転車で走っている所を即思い出したけどそれらよりも作画と演出が凝っていたかもしれない。関係ないけど歴史物の実写映画で2015年リメイク版日本のいちばん長い日でマントルを纏った青年将校達3人が大きな日本家屋(皇居?)の作戦本部の周りの砂利道を車でもバイクでも無く実用車で走るアンバランスなシーンを思い出した。車はガソリンが無くなって途中で止まるし末期は大変だったんだな。コクリコに話を戻すと、風間が汗だくになりながら立ち漕ぎで登坂を上る時に、車体が左右に揺らすシーンまでアニメーションさせてて細かい。テレビアニメだとハンドルより上を描いて、下は省略させる事も多いのに。
メルを乗せてコクリコ坂から麓の魚屋まで飛ばすダウンヒルのシーンも絵的に心地よい。加速感や、慣性で傾いたり、カーブの遠心力で外側のふくらみ具合とか良くできてるし、体を寄せあった二人が会話するだけのシーンだけなのに、カメラが近寄ったり引いたりをPCの編集では無く手書きでアニメーションしていて凝っていてなんか気になった。どんなコンテなのか興味ある
◇うすしお味
ここまでわりと好意的に良いところを挙げてきたし個人的にどちらかというと好きではあるものの、正直このアニメはストーリーが薄味であまり心に訴えかけて来ないから名作とはちょっと言いづらい。最後のシーンで旗揚げで終わるのはちゃんとテーマに合っていてまとまりが良いし、カルチュラタンもしっかり守れたし、メル(海)と風間の恋愛も障害物は取り除かれ大ハッピーエンドを迎えたはずだけど、なんか物足りない。満足感が無い。はらはらどきどきする要素がなさ過ぎてまるで日常系アニメみたいだ。日常系は日常系で別腹で好き。出生の謎も凝ってはいるけど、でも正直そこらへんはあまりそこまで興味ないし……。そういえば中期後期ジブリは一時期恋愛もの~ラブコメっぽい青春アニメ映画を作ってた時期があったな。なんだろう。プロデューサーに作らされてたのだろうか
◇まとめや細かい疑問等
最後に細かい事2つ。松崎家3姉弟の海、空ちゃん、陸の長女であり主人公である海をメルと呼ぶのは簡単に海空陸と気づかせない為のミスリーディング狙い?そういえば他のキャラは日本人名で設定もリアル寄りなのに一人だけめると呼ばれていてファンタジー色が強く違和感があり、慣れたのは終盤に入ってからだった。また最後に理事長に学生に部室棟は他に建てようみたいな事を言ってた気がするんだけど、それってカルチュアたんと新し部室棟合計2つできるということ?
まとめ。軽いラブコメ。自転車、1963年のまっすぐで熱心なオタクの先駆者達、戦争は直接関係ない