「たまこまーけっと(TVアニメ動画)」

総合得点
84.5
感想・評価
2638
棚に入れた
12404
ランキング
287
★★★★☆ 3.8 (2638)
物語
3.5
作画
4.1
声優
3.7
音楽
3.6
キャラ
3.8

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ネタバレ

鰺鱒 さんの感想・評価

★★★★★ 4.7
物語 : 4.0 作画 : 5.0 声優 : 4.5 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

人情劇。素敵な音楽と共に。

京都のとある商店街。老舗餅屋の長女と、そのもとに舞い込んだ(なぜだか)しゃべる鳥、学校の友人や商店街の人々のちょっとしたお話を描いた作品。主人公が高校一年生で迎えた大晦日から、次の大晦日までが描かれています。

作画はさすがの一言。静止画としても動画としても手抜きが一切無い。描かれるキャラのちょっとした仕草、わずかな表情や視線の変化での「演技」には驚愕する。もちろん、メインとなる女の子達は愛らしい。

視覚に訴える演技もさることながら、声優さんの演技・演出もすばらしい。OP/EDは主人公たまこが歌っているのだが、絶妙の「うまくなさ(ごめんなさい!)」が曲調にぴったりはまっていると感じた。うまくなさ、なんて書いたけど全く不快に思わない。むしろこれじゃなきゃだめという完璧なラインだと思う。表現が難しいです。音程を外しているとかではなく、、高い音での「ぎりぎり感」とでもいうか、なんていうか。

大きな物語には乗せず、商店街・学校での日々をほのぼのと描くなかに、人々の心の動きを巧みに描いていると思います。もちろん、終盤にはそれなりの山場がやってきますが、基本的にはちょっと変わった日常の一幕。強いて言うなら、某公共放送が土曜の夕方とか金曜の夜に展開していた(いまも?)、10話一区切りくらいの時代劇・時代物ドラマの雰囲気を感じました。いわゆる人情物。各話の始まりと終わりが「しゃべる鳥」の語りになっているのですが、この構造も、語る中身もそんな雰囲気を感じました。もちろん、各エピソードも「日々の一幕・人情系」の構成で、見終えるとなんだか心温かくなります。

(と、書いてから「人情物」って別に時代劇に限定される物ではないと気がつきました。が、幼少のころよりあまりテレビを見ない&見る場合はほぼ某公共放送に限定という生い立ちのため、自分の中の実感としてこのままにしておきたいと思います)


人情物がお好きな全ての方にお薦めしたい、珠玉の日常系作品と思います。

個別に書き出すと長いので・・・以下畳み込み

{netabare}
さて。。どっから行こうか~

― 鳥がしゃべるんだけど・・・
{netabare}現実にいたら、恐怖の対象でしかないと思うのですけど・・・基本スルーに近い反応しか示さないことに、最初は「?」でした。が、こういう人々なんだ・これOKなんだと言うことを第1話の間に納得させられました。納得?「ま、気にせんでいいらしい」、かな?何がそうさせたのかを指摘することは難しいのですが、やはりお話の作り方や脚本がうまいと言うことなんでしょうか。
{/netabare}

― 人情物時代劇
{netabare}特に某公共放送の人情物時代劇って、ほんとに「何も変わらない」日々の営みが綺麗に描かれることが多いと思っています。もちろん作品に依りますが。捕り物系であったとしても、基本的には「終わらない日常」の一幕@仮想的江戸時代なわけです。それでも見たくなる&見てしまう作品は、人物造形がしっかりしていて、かつ、作中にそれが必要十分に描かれている(演技も含む)ことが重要な気がしています。

たまこまーけっとも、まさにこれに当てはまると思います。商店街の面々も、「なに屋さん」なのか、どんな人なのかが必要なだけ描かれています。それでもしっかりとお話の屋台骨を構成していきます。そこに、ちょっと不思議なさむしんぐが足されているというかんじです。

記号的な解釈で行けば「ふらいんぐうぃっち」に通じる物が見えてきますが、両作品から受ける印象は全く別物です。かたやのんびり全開青森県、こなたそこそこ賑やか商店街、の違いだけではないはず。おもしろいです。
{/netabare}

― 喫茶店のマスター
{netabare}この作品・お話に欠かせないのはレコードショップ兼コーヒーショップ「星とピエロ」のマスターと彼がかける(関わる)レコードだと思います。全てのエピソードではなかったと思いますが、要所要所にマスターの選曲と、マスターの誰に向けてともいえないひとことふたことが光りました。カウンターに座る誰かの心情を見事に現し、時に動かす。欠かせないピースです。2話のun lieu de rencontreはびっくりするくらいよかった。

星とピエロ。中原中也。この詩自体が僕の解釈に余るので、これ引っかけでは特に何も言いませんが、作中は他にもいろいろちりばめられていたのかなとおもいます。

っていうか、しゃべる鳥よりもこのマスターの方がある意味怖いです。
{/netabare}

― 化け物じみたOP映像。
{netabare}技術・技法面でも、音楽との嵌まりでも、描かれる雰囲気・楽しさも、なによりたまこのかわいらしさも・・・・すべてがすんげえ。

途中、たまこが先頭に立って(マーチングバンドとかの)リードをとります。これがまた「よこゆれ」で拍子を取っていて、楽しげな感じ全開です。実際のマーチングバンドのリードが横揺れしてるのってあんまり見ない気がするのですが、格好いいですね(以前、アメリカの大学のマーチングバンドがきびきびした横揺れでリードとっているのを見たことがありますが、あれもすごかった)。

時に、アニこれでの本作のあらすじが「バドミントン部」になっていますが「バトン部」or「バトントワリング部」ですよね・・・登録しちゃったらなかなか直せないってことなのかな・・・?

あまり描写されなかったけど、史織さんのロングサーブ(か、球出しのロブ打ち)の描写は素敵でした。
{/netabare}

― 商店街の面々
{netabare}驚いたのは、開幕でのフローリストプリンセス。「おぅっ?!」ってなりました。すげー。この方に深くフィーチャーしたエピソードはありませんでしたが、見てみたいな。

風呂屋の娘さんと豆腐屋の兄さんのお話などは、人情物の定番展開ともいえます。ドラマなんかだと、娘さん=ゲストキャストで繰り広げられるやつですね。

もう、こういう商店街って絶滅間近なんだろうな・・・・面倒な側面ももちろんあるんですけど、こういうのが全くないってのもちょっと寂しいな。
{/netabare}

― お妃候補、、、じゃないの?
{netabare}終盤にかけての「やま」展開は、ほぼ予定調和な締めくくりでした。人情物ならそれでいいんです。でも、王子様が言った「この方は候補じゃないよ」は本当なのかな。王子が「商店街におけるたまこの重要さ」「商店街のたまこにとっての意味」を察した結果なのかな。わからないけど、どっちだとしてもいい締め方だったと思います。
{/netabare}

― 相変わらず、時間・時節の見せ方が
{netabare}花言葉にはあまり興味が無い(というより、積極的に嫌い?なのかな?)ので、こちらはあまり深く掘りません。でも、満開の桜→葉桜の描き分けで時間の経過を見せるなど、相変わらず視覚的情報による時間の表現がうまいな、と思います。メイドラゴンでも、冒頭に見せる植物で季節を伝えていましたね。

そういう視点で行くと、このプロダクションの表現方法って、日本人じゃないと理解しきれない物が多いように思います。日本人でも、地域によってはなじみの薄い物が多いともいえますね。
{/netabare}

― たまこの「不安」
{netabare}最終回、昼間なのにシャッターが並ぶ商店街を見た、たまこの不安の表現。うまく言葉に出来ないのだけど、「うわぁ」となった。(よくみる)足下のカットに、不安定なカメラの揺れ。うわぁ。たまこは明るく語るけど、その裏腹にあるのは・・・・うわぁ。

デラじゃないけど、走り泣きしそうだった。
{/netabare}

{/netabare}

映画(?)もあるんだ。今度見ようっと。

[2020/08/24 v1]

投稿 : 2020/08/25
閲覧 : 701
サンキュー:

40

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