ぽ~か~ふぇいす さんの感想・評価
3.6
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 3.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
この作品はストレートな人情ものなのか?
ゴッドファーザーと聞くと真っ先に頭に浮かぶのは
私の場合は某マフィア映画だったりするんですが
脇役でやくざのボスは出るものの
東京ゴッドファーザーズは任侠映画ではありません
そもそもマフィア一家の家長がゴッドファーザーと呼ばれるのは
もともとはキリスト教の洗礼時の代父あるいは教父
つまりは名付け親というのがゴッドファーザー本来の意味で
かつてのキリスト教圏ではその名付け親が
生涯にわたって第二の親として後見人を務めたことに由来します
この作品におけるゴッドファーザーの意味は原義の方
つまり「三人の名付け親」から来ているんですね
個性的な3人のホームレスたちが
クリスマスにごみ捨て場で捨てられている赤ん坊を見つけます
それぞれにいろいろと複雑な事情を抱えながらも
家族と離ればなれになっている3+1=4人が
家族との絆を取り戻していく・・・そんなお話
原作・脚本・監督:今敏
な作品ではありますが
脚本だけは共同執筆者に信本恵子さんの名前があります
カウボーイビバップのシリーズ構成や脚本
WOLF'S RAINの原作などをされている方ですね
ちょっとヒネた人情物語になっているのは
彼女の色が出ているようにも思えます
テンポ良く進むストーリーの中で
伏線を次から次にたくさんばらまいて
中盤から終盤にきっちり回収する手法は見事でしたが
注意深く見ていなくても伏線と分かるよう強調された伏線
そしてその帰結となるシーンも
ここでアレをあんな感じで回収するのかな?
という予想をほとんど裏切らないので
他の今作品のようにアッと言わされるようなことはあまりありません
だから、これをこれまでの今作品とは趣を異にした
ストレートな人情ものと受け取る方も多いでしょう
しかし、この作品に関するインタビューで
この作品がストレートな人情ものなのかどうかという議論を受け
監督はこう語っています
『「ひねった人情もの」だとは言ってるんです。単なる人情ものを作ろうとしていたわけではないんです。人情もの的な枠組みを借りてきたということであって、中味まですっかり人情ものにしようと思っていたわけではないです。「ひねった人情もの」という言葉で言うと、「人情もの」よりは「ひねった」という形容の部分が私には大事だったわけです。
これまでの作品では、トリッキーな部分を「劇中劇」とか「夢と現実の混交」といった形で明確に提示していましたが、今回はトリッキーな面がどこに行ったんだか見えなくなるくらいまでひねってあるつもりです。』
・・・どうやら監督の中ではストレートな人情ものではないようですね
ところで野球におけるストレートというものが
実は変化球の一種であるという事をご存知でしょうか?
通常、物を投げたときの軌跡は
水平方向には等速運動をしつつ鉛直方向に等加速度運動をして
y=ax^2の二次曲線、いわゆる放物線を描くわけです
それに対してストレートという球種は
バックスピンがマグヌス効果によって生じさせる上向きの揚力で
通常よりも上向きの方向に軌道を変化させ
本来なら落ちるはずの落ち方をしない「まっすぐ」な変化球になるのです
インタビュアーや監督が使った「ストレート」という言葉には
単純にまっすぐという以上の意味は無いように思えますが
不自然なほど偶然に偶然が重なた結果
普通なら落伍するような困難を乗り切っていく様といい
本来物語を一直線にしないためのギミックである伏線が
かえって物語を平坦にしている点といい
まっすぐな変化球「ストレート」
私はこれほどこの作品にふさわしい形容は無いと思います
ということでこの映画は
「ストレートな人情もの(笑)」
という括り・・・でいいんじゃないかな?