Ka-ZZ(★) さんの感想・評価
3.9
物語 : 3.5
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
フランケンシュタインによって屍体の蘇生技術が確立されるこの時代に魂の尊厳はあるのか…
この作品の原作は未読ですが、アニメーション制作が「進撃の巨人」や「魔法使いの嫁」を手掛けたWIT STUDIOさんであることを知り、今回の視聴に至っています。
実は、この作品の事を含め知らないことだらけでした。
著者が「虐殺器官」を執筆された伊藤計劃さんだったこと…
「虐殺器官」は未視聴ですが、私でもタイトルを聞いたことのある作品です。
そして34歳という若さで早逝されていたこと…
生前、伊藤さんは「屍者の帝国」を書きあげ、自分の紡ぐ物語が読者に届くことを望んでいたこと…
その伊藤さんの遺志を継いで盟友である芥川賞作家・円城塔さんが完遂させた作品であること…
“Project Itoh”の一環として「虐殺器官」、「ハーモニー」と共に劇場アニメ化されたこと…
沢山の人の遺志と意志がこの作品を作り上げていたんですね。
19世紀末――かつてフランケンシュタイン博士が生み出した、死体より新たな生命「屍者」を生み出す技術は、博士の死後、密かに流出、全ヨーロッパに拡散し、屍者たちが最新技術として日常の労働から戦場にまで普及した世界を迎えていた。
後にシャーロック・ホームズの盟友となる男、卒業を間近に控えたロンドン大学の医学生ジョン・H・ワトソンは、有能さをかわれて政府の諜報機関に勧誘されエージェントとなり、ある極秘指令が下される。
世界はどこへ向かうのか? 生命とは何か? 人の意識とは何か?
若きワトソンの冒険が、いま始まる。
公式HPの内容紹介を引用させて頂きました。
屍者を労働力や軍事利用するという発想がぶっ飛んでいると思いましたが、この状況を一番最初に受け入れたのは、世の中の女性だったそうです。
何故なら、屍者が戦争に行ってくれるなら自分の大切な夫や息子を戦場に送り出さなくて良くなるから…なんだそうです。
確かに気持ちは分からなくはありません。
亡くなった方より生きている方を優先させる考え方も…
でも、魂の尊厳は微塵も感じられないと思ったのも事実です。
それにフランケンシュタインは死体を集めて繋ぎ合わせた人造人間で、亡くなった方をそっくりそのまま生き返らせた訳ではありません。
姿かたちが一緒じゃないから割り切れることってあると思います。
それはこの作品を見れば明らかです。
この物語の鍵として、人造生命創造の秘密の記された「ヴィクターの手記」があります。
主人公であるワトソンが続けてきた長い旅で証明された唯一無二は、その手記を破棄すること…
でも実際にその手記を前にした時、彼の双肩に重く圧し掛かったしがらみが、判断を鈍らせるんです。
その結果が最悪な事態を迎えてしまったとしたら…?
そう考えると彼が判断を鈍らせたのは良くないことだったのかもしれません。
ですが、そこで彼の事をバッサリ切り捨てることがどうしてもできないんです。
何故なら、もし自分が同じ立場だったら、きっとワトソンと同じ行動を取ったと思うので…
彼の気持ちが痛いほど分かりましたから…
と、順調に視聴を続けてきたのですが、ラストの駆け足ですっかり置いてけぼりを食ってしまいました。
ぶつ切りの物語が次々と流れていくのですが、どれも重要なポイントであるにも関わらず言葉足らずな感じがしたんですよね。
確かに多くない台詞から感じ取る必要があるのは分かりますが、前後の脈絡があって始めて成立する構図だと思うんですよね。
それがぶつ切りなら伝わるモノも伝わらなくなっちゃう…
そこが少し残念だったかな。
でも、作画はめっちゃ綺麗ですし、細谷さんや香菜ちゃんを始めとする声優さんはムッチャ良い仕事しているので、それだけで完走できちゃう感じの作品だったと思います。
上映時間120分の作品でした。
久々に長編アニメ映画を視聴しましたが、やっぱり見応えは半端ありませんね。
「虐殺器官」、「ハーモニー」もNETFLIXで視聴できるので、いつか時間を作って視聴したいと思います。