無毒蠍 さんの感想・評価
3.4
物語 : 3.0
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
色々とスタイリッシュな作品だがどこか味気なさもある。
ジャンルは異能力者アクションという設定だけで流行りそうなもの。
この作品では異能力者のことを契約者と呼んでおり主人公も契約者です、
主人公であるヘイは電流を操る能力なんですが、
バカ正直に電流を流すのではなく
ワイヤーを相手の首に巻きつけたりして安全に、そして確実にしとめるタイプです。
劣勢になっても冷静沈着で反撃の機会をうかがってるような危険なやつ。
人気ありそうなダークヒーローという感じ。
契約者には対価があるのですが、
この対価が細かくて面白いです。
能力を使用する対価として吸いたくもないタバコを咳き込みながら無理して吸ったり、
石のようなものを丁寧に並べて最後にはバラバラに崩す。
この崩すというのはやりたくもないことを対価としてやってるので、
並べ終わったあとはバラバラにふっとばしているように感じた。
このように無駄な事をさせられてると思ってる契約者が多く対価という感じがしました、
他にも老化だったり逆に若返ったり詩を書くなんて契約者もいたね。
しかしヘイは契約者なのに対価がありませんでした、
主人公の設定で大食漢というのがあってそれが対価かと思ってたのですが違うみたい、
ただの大食いらしいねw
律儀に固有の能力というわけじゃなくて、
普通に同じ能力だったりすることもあるみたい。
主人公も同系統の能力者と出会ってしまったんだけど、
主人公はその先の物質変換という能力もありますから、
そこまで同じだったのかは不明です。
元々主人公の能力は妹のもので主人公は契約者じゃありませんでした。
もっとも契約者になる前でも契約者と戦えるくらい強かったですけどね。
この作品では生身の人間で契約者と戦える人間が全然でてこないので、
主人公は別に契約者じゃなくてもありだったかも。
物語的には主に前編後編による二話完結タイプ。
一話からいきなり前編後編なので少々置いてきぼりというか、
馴染むまでにちょっとかかるかも。
話的には純粋なハッピーEDというのはあまりなく、
どの話でも哀愁というか余韻のある切なく悲しい終わり方が多かったです。
この作品の魅力は能力者同士のバトルよりも
そこにたどりつくまでの過程ではないでしょうか。
誰が何の目的で何をしているのか?
それらを探っていく過程が興味深く面白いです。
人としての不器用な生き方というものが描写されていました。
主人公は強いですが万能ではなく全ての人間を守れるわけではありません、
上でも述べたようにむしろ主人公が請け負った任務では悲哀あふれる結末が多いように思えた。
ヘイは常に仮面をつけ任務を遂行してるわけだけど、
重要人物に正体がバレるのを期待したりはしないほうがいいかもね。
ラストでここでバラさなかったらチャンスがないからバラしたんじゃ?と思わせるほど
味気ないものです。
設定も説明不足というか一周観ただけじゃよくわからないかも、
こういう事なんだろうな~、と何となく把握はできますが詳細までとなるとちょっと複雑。
展開も終盤までは良かったのですがラストは人間と契約者の戦争みたいになってて、
少し広げすぎちゃったかな、期待してた能力者たちもあっさり死んでくしね。
終盤で一気に印象的な能力者が登場したのはいいけど、
処理しきれてなかったと思う、終盤一気に詰めすぎて気がついたら死んでました。
やっぱりこの作品は能力者同士のバトルよりも人と能力者の関係性だったり、
共存は可能なのか?という様々な関係性を描写していました。
構成的にはカウボーイビバップに似てるかもね、
バトルもあるけどそれがメインではなくそこまでの過程のほうが丁寧に描写されてたという印象です。
全体的に暗い雰囲気の作品だけど清涼剤もいくつか存在します。
主人公のパートナーでもあるマオ、
彼は人間ですが契約者で動物の肉体に自分の精神を移すことが可能なのです。
なので作中ではほとんど猫として登場します、そもそも本来の体を無くしちゃったという悲しい契約者w
確実にその体はすでに死亡してるでしょうね。
能力も動物限定なので二度と人として生きることはできないんですよ。
そんな彼が作中では清涼剤としていい働きをしてくれました、
契約者なのにあまり肝がすわってないというか言葉では冷静沈着でも、
内心ビクビクというタイプ。
ある意味彼が一番人間らしく感じ安心できます。
そして清涼剤としてもう一人活躍してくれたのが久良沢凱という私立探偵。
的外れな推理ばかりだがその熱意や正義感は本物で好感がもてます。
この作品で一番闇の部分が組織と呼ばれてる機関です、
とてつもなく巨大な組織という事以外ほとんどが謎でよくわかりませんでした。
主人公も組織のエージェントとして存在してましたが、
この組織の規模が大きすぎて色々と雰囲気ぶちこわしだった気がしないでもない、
というのもあらゆるところに組織の工作員やらなんやらが存在していて
結局お前も組織の人間かよ!という展開が多かった気がします。
そりゃこんな大規模な組織じゃ主人公たちでもどうすることもできないよなと納得。
一番闇の部分がほとんど謎のまま終わるというのはやはり消化不良ですよね。
面白い作品ではありましたがまだまだ気になること、
向かい合わなければならないことなど多くの謎を残してるのが残念です。
終盤の粗さがなければもっと良かったと思うのですが異能力者ものとしては
それなりに楽しめると思いますよ。
【A80点】