タック二階堂 さんの感想・評価
3.0
物語 : 2.0
作画 : 3.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 2.5
状態:観終わった
結局テレビ版のモヤモヤが何も解決されず…
詳細はテレビ版を観てください。
というか、テレビ版を観ていないと意味がさっぱりわからないはず。
なぜかバカ売れした少女漫画のTVアニメ版の続編? というか語られなかったエピソードという映画です。
原作未読なので知りませんが、1クールのテレビ版はストーリーも作画も褒められたものではない出来で、酷評した記憶があります。
でまあ、その後に映画をやっていたという記憶が薄っすらとあったんですが、調べてみると2週間の期間限定劇場公開という短さで、そりゃ観に行かなかったわけだと。ま、ロングランでも観に行かないだろうけど。
今回、サブスク解禁となったようなので観てみましたが、正直観なくてよかったなという感想です。1時間なので、テレビ版を観た人はヒマでしょうがないというタイミングなら観てもいいかもしれませんね。
いちおう作りはテレビ版のダイジェストに新たなエピソードを織り交ぜた感じで、飽きることはないかもしれません。こちらは菜穂目線ではなく、須和目線のストーリーとなっています。
{netabare}
ですが、まずもって須和の行動原理がまったく理解に苦しみます。翔が死んだ世界線の10年後、菜穂と結婚して子どももいるのに「翔の死を利用して菜穂と結婚した」と罪悪感を持ちながら生活している須和。そして、それが耐えきれなくなって、高校時代の仲間を集めて10年前の自分達に、翔を救うように手紙を書き、それを瓶に入れて海に流し、バミューダ海域からタイムスリップさせようとするわけです。
そもそも、テレビ版からこの行動が意味不明すぎて、物語のコアが破綻しているのでポカーンなわけなんですけどね。で、おそらく原作者が理解の及ばない出来事を描くのを避けたんでしょう。無事に10年前に流れ着いた手紙たちは、それぞれの手元に届くわけなんですが、これを同じ世界線にしてしまうと未来(いま自分たちがいる世界)が改変されてしまうわけです。それは面倒くさい(整合性を取ったり、つじつまを合わせるのが)。なので、届いたのはパラレルワールドの「翔が死ななかった世界」ということにしてしまうんですね。
なので、観ている方としては「何のためにこんなことやってんの?」感がハンパない。そこを強引に納得させるために須和は「こんなことしても意味がないかもしれない。でも、翔の供養のために、どうしてもやりたいんだ」的なことを言うわけです。ま、罪悪感をまぎらわすためのアリバイづくりみたいなもんかね。
翔が自死したのは翔の意味不明な弱さであって、そのことで落ち込んでいた菜穂に優しくして結婚したことに負い目を感じ続ける須和って何なんでしょう? そして手紙に「俺はずるい」って、そんなことは一瞬思っても気に病むほどのことではないのでは?
で、翔が死なない世界線の続きも描かれます。須和のお望み通り、翔は菜穂と付き合い、須和は「菜穂と翔が隣に並んで年を取っていくのを見ていたいんだ」的なことを言うんですが、なにそれ気持ち悪い。そんなの優しさでもなんでもないですよ。
さらに、未来の自分たちから手紙が来たこと、翔を救うように書かれていたことを本人に言うんです、みんな揃って。そんなことを聞かされたら、翔は普通、何かしらの感情が起こるはずなんですよ。申し訳なさ? 怒り? 恥ずかしさ? そんなものが一切描かれず、平然と菜穂と幸せに暮らすわけです。
ラストは、何度も本編で出てきた10年後の桜の名所的な場所で、6人になった(翔が生きている世界で)仲間が集まり、翔と菜穂の子どもを抱いた須和。そして丘の上から夕陽を見て翔が「オレンジだ」(ここでタイトル回収)とつぶやくと。そんな夢を見て涙を流す現実世界線の菜穂でしたと。
は? まさか夢オチ?
観終わった瞬間、思わず「くっだらねえ」と声が出てしまいました。
{/netabare}
さすがに作画は劇場版だけあって、テレビ版のような溶けちゃっているなんてことはありませんでしたが、やけにキレイな背景美術からキャラ絵が浮いちゃってるような感じ。音楽もテレビ版同様にコブクロを起用し、作品の雰囲気を演出するのに一役買っています。
ただ、なんといってもストーリーが好きじゃないですね。グループみんなが翔を救うために滅私奉公している姿が気持ち悪くて仕方ありません。自分が腫れ物に触るように仲間から扱われるのを当然と思い、わがままに振る舞う翔も気持ち悪い。とにかく、いろいろ気持ち悪い作品です。