oxPGx85958 さんの感想・評価
3.0
物語 : 3.0
作画 : 3.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
枠組みがしっかりしているSFアニメ
面白いという話を耳に挟んで、2020年のいま、見てみることにしました。
ロボット・アニメ全般が苦手な私ですが、大きなストーリーの流れと世界設定が興味深く、最後まで中断なしで見通しました。終盤での展開など、納得の行かない点はいくつかあったものの、基本的にはよく練られている物語だったと思います。
ただやはり、パイロットや管制センターに詰めている人々が職務中に熱い思いを込めて絶叫するロボット・アニメ話法はキツい。人が効率の悪そうな操縦体系の人型ロボットに乗り込んで、理屈のわからない飛行方式と武器で戦うという様式自体は受け入れられるんだけど、戦闘中の心理描写と状況説明を兼ねた叫びは勘弁してほしい。
主要登場人物を高校生にしているがゆえの学園ものとしての描写もキツい、んだけど、本作では、この部分が学園ものの文法に則っている分だけキャラクターたちの描写に説得力がありました。そのほかの人たちの多くは、バックストーリーに尺が割かれているキャラクターも含めて、背景事情も行動原理もよくわからない、物語を進めるための道具に見えかねない、と感じました。
本作では登場人物たちの存在としてのあり方が、普通の物語とはかなり異なるものに設定されているのだけれども、ここから生じるギャップを視聴者に納得させるための描写が全体的に足りなかったのではないかと思います。{netabare}たとえばオケアノスの指令のシマと副司令のミナトはどちらも高校生で、生徒会の会長と副会長をやっています。「実際に生きてきた時間」はもっと長いから、外見上の年齢よりもずっと成熟していて、強大な敵との戦いを指揮する力を備えているという設定なんだとは思うけれども、そのことと、彼らが実際の高校生に混じって学校に通っているということのズレについての描写がないため、彼らの内面生活がどんなものなのかがよくわからない。{/netabare}
これは{netabare}シリーズを通じて、記憶を失ったキョウの視点が描かれていて、そのキョウの内面はわかるけれども、記憶を持ちながら時間の繰り返しをするキョウの内面は描かれないからわからない{/netabare}ということとパラレルで、この物語の大きな主題を鑑みると、後者の方がずっと重要なんじゃないかと思うわけです。
SF的世界観の構築はけっこう丹念にやったけれども、その中で生きているキャラクターたちの造型がぞんざいだった。
そんな中、キャラクターとしての存在感と説得力があったのが、花澤香菜が演じるリョーコと朴璐美が演じるルーシェンでした。この2人については、声優の力が大きかったのはもちろんだけど、いい見せ場も与えられていたように感じます。声優の力があったがゆえに、いい見せ場が実現したということなのかもしれませんが。
最近アニメを見始めた私は、朴璐美の名前は知っていても出演作にはあまり触れたことがないのですが、本作を見て、なるほどこれは凄い人なんだなと思いました。他のキャラクターと比べてそれほど細かい描写があるわけでもないルーシェンが、奥行きのある人物のように見えてしまう。具体的な情報が与えられる前から、キャラクターのモチベーションの存在とその強さが伝わってくる。
花澤香菜は、なんというか生々しくてよかったです。