ウェスタンガール さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
人間原理の宇宙論
タイムトラベルと共にSFファンの心を捉えて離さないテーマである多元宇宙論。
加速膨張する宇宙が別の宇宙に“相転移”すると、沸騰する湯の中に気泡が生じるように、元の宇宙の中に新たな宇宙の泡ができる。
宇宙どうしが量子的な“重ね合わせ”となり、これがいわゆる並行世界という訳だ…、違うかな?(頭の中がインフレーションとなるのでこの辺で)
さらに、ノーベル物理学賞を受賞しているワインバーグ博士が提唱した“人間原理”の宇宙論によれば、我々の世界は、人間がそこに存在しているという事実を考慮に入れなければ存在せず、「この宇宙は、知的生命体が生まれるような構造をしている」というのだ。
SFマインドがくすぐられる。
ラーゼフォン、それは人智により観察され、存続してきた二つの宇宙が衝突し、合わさり、“調律”されてゆく物語である。
しかし、異なる宇宙ではあっても、そこに存在するのは、等しく人間の営み、そして情愛であるという視点を譲ることはない。
哀しくはあれども、温かさを伴った“人の世界”の物語である。
主人公の“綾人(あやと)”くん、年上のヒロイン“遥(はるか)”さん、不思議少女の“久遠(くおん)”、そしてTERRAの亘理(わたり)長官、彼らの、限りなく“面倒くさい”キャラ設定を見せられれば、エヴァの亜種であるという評価がされるのも仕方のないことかもしれない。
しかし、しっかりと伏線を回収しながら、ビッグバン、そのグラウンド・ゼロへと、静かに収束してゆく構成は良く練られており好ましい。
{netabare}二体のラーゼフォンが体現する禁断の結末が意味するものを感じてほしい。{/netabare}
さらに、個性的な脚本陣が繰り出すクセ球を楽しむのも一興だ。
非常に丁寧に描かれたキャラクターたちが、それぞれに与えられた役割を演じ切る。
加えて、全てのメカニックに統一感を持たせた、“スタジオぬえ”のデザインワークの素晴らしさ。
多くのクリエーター達の遊び心と執着心に満ちた好編である。