二足歩行したくない さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
ただ、己が内にのみ求める
同人作家時代の奈須きのこが書いた伝奇小説が原作のアニメ映画化シリーズ。
本作はその5作目です。
両儀式は街中でふとした事から、"人を殺した"と言う少年・臙条巴と出会い、彼を匿うことになる。
街頭の巨大スクリーンに写し出されるニュースの下で、巴は幾日も自分の犯した罪が流れるのを待つが、その事件が放映されることなく、日々は無常に過ぎてゆく。
事件のあらましを聞き、思うところのある式は、巴と共に自宅のある小川マンションに赴くという展開。
内容は非常に難解です。
式の「直死の魔眼」の能力には秘密があり、元台密の僧・荒耶宗蓮は、根源に至るため式の体を欲し、拠点にしている小川マンションにおびき寄せる。
アラヤは何を求めるのか、何処に求めるのか、そして何処をめざすのか。
結界化されたそのマンションで、毎日繰り返される罪無き住人の死の日常は、恐ろしい許されざる行為に違いないのに作中誰もその行為自体を咎める者がいないのが非常にシュールに映りました。
命を弄ぶような行為も、魔術師の崇高な目的の前には、どうでもいいようなことだというのか。
本作の作中でストーリーの時系列がぐちゃぐちゃしており、やや混乱しそうになりますが、私的にはちゃんと見ていれば理解できないほどでは無いと思いました。
大筋の展開は時系列通りに進んでいるので、普通に楽しんで見れると思います。
ただ、内容自体が難解で、荒耶はなぜ起源を同じくする者たちと式を戦うように仕向けたのか、抑止力とは何か、なぜ式を手に入れることで『 』に至ることができると考えているのかなど、ちゃんと追わないと理解できずに終わるかもしれません。
衒学趣味的な意味ではなく、空の境界という作品内での理屈なので、前提知識ではなく、理解する力が必要と思いました。
なお、奈須きのこ氏が個人HPに空の境界を掲載していた頃は、劇場版第5章となる本作で、空の境界は幕を閉じていました。
空の境界はある意味では荒耶宗蓮の物語であり、本作にて一旦完結となっています。
本作は第1章から第4章までの締めくくりとなり、シナリオの重厚さも、そう思えば納得の内容でした。
でも、空の境界はもう数話続くのです。