くろゆき* さんの感想・評価
3.1
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 1.0
音楽 : 1.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
なんか、獣臭いから
ごく普通の女子大生の主人公花が、大学でふと知り合った物静かなイケメン、そのイケメンと話して意気投合し、彼が絶滅したニホンオオカミの末裔である事を知りつつも互いに惹かれあっていき、同棲した後に二人の子供を授かり、姉の雪と弟の雨と名付けられた双子が生まれます。
しかし、その幸せは長くは続かず、夫は事故死。そしてオオカミと人間のハーフの子供達は都会で育てるにはあまりにも難しく、人が少ない田舎へ移住し、そこで現地の人達との触れ合いを通じ、子供達と共に成長していく物語でした。
野生の本能を出したりする子供達に手を焼き、田舎へ移住したけれど、生半可な知識や行動でどうにかなるほど田舎の暮らしは甘い筈が無く、そういった事でも花は苦労していきます。けれどもぶっきらぼうで無愛想だけど、なんだかんだ厳しくも優しい菅原文太演じる老ベテラン農家や、周囲の人達との触れ合いによって、次第に田舎の暮らしに溶け込んでいきました。
けれども、それで「めでたしめでたし」になるほど本作は単純ではありませんでした。人間として生きるか、オオカミとなるのかという悩みを双子が持ち、雪は人間の友達が多く出来た事で、人間として生きようとしますが、雨の方はそんな人間社会に馴染めず、オオカミとして生きる道を選ぼうとする訳で、そういった生き方の問題で二人の衝突や、家族の中での問題も描いており、そういった子供の巣立ちの難しさを出していたといえます。
本作は子供向けのような画でありながら、内容は大人向け作品であり、そういった子供の成長や、今の日本が失っている大切さというものを描いているといえます。震災の後もそういった日本人が本来暮らしていた生き方というものが薄らぎ、経済や金に振り回されているという事情が続いている現状を映しているようです。そういった生き方を取り戻すのは、ニホンオオカミが絶滅して、その姿を二度と見る事が出来ない現代では、ある意味ニホンオオカミを見る事より難しいものになっているメッセージを投影しているかとも思えます。
雪にしても、雨にしても、どちらも生き方を間違えていないのですが、その為に生じる摩擦や問題に、家族関係の軋みのようなものを描きつつも、真っ当に生きる事の難しさも出しているとも思えます。学校や人間社会に馴染めない雨がオオカミとなったのも、オオカミである事を封じ、人間の道を選んだ雪にしても、そういった乳離れの形も描いていたといえるでしょう。