くろゆき* さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
フングルイ ムグルウナフ クトウルウ ルルイエ ウガフナグル フタグン
本作ではデジモンシリーズでも稀にみる、ノスタルジックな作風が特色の作品であり、その為か放映当時は非難の色が濃かったとのことですが、個人的には大変面白い作品でした。
まず、本作が子ども向けアニメの映画として相応しい作りになっているかについてですが、これもまた個人的な見解であることを承知で言わせてもらうと、相応しいつくりではないかと思います。本来のターゲット層である子どもと、映画に連れて行ってとせがまれた少しアダルトな年齢層のどちらもに適度な娯楽を提供できている、とてもバランスの良い作品だと感じました。
全体的に漂うノスタルジックな雰囲気と、本作のキーワードである【戻れない過去】。この二つの要素が見事にマッチしており、全体的に感傷的で、時間の経過を忘れて魅入ってしまうだけの空気があります。(できれば映画館で観たかった……)
こういうのは多分、子どもよりも大人の方がグッとくるんじゃないでしょうか。
それでいて、子ども向けとしての娯楽性も忘れていません。
本作は短所としてしばし、ストーリーの難解さ、設定の矛盾などが取り上げられていますが、正直これらはさほど重要ではありません。本作が他の映画と違って本編と直接関係していないお話だからパラレルワールドと考えれば良い、というのもありますが、それよりも、そもそも子どもはそういうところを気にしないからです。
例えば、劇中でパタモンとテイルモンが突如として究極体に進化しましたが、こういう場面で整合性を考えるアダルト層は「いきなり究極体になれるはずがない」と考えますが、子どもは「パタモンが究極体になった! スゲェ!」って純粋に驚くだけです。子どもは、目の前の娯楽に対して非常に好意的です。たぶん、制作側もそう考えて作ったんだと思います。(もしかしたら、ここまでアダルト層から人気だとは思っていなかったのかもしれないけど)
んで、ストーリーの難解さというのは確かにありますが、だからといって子どもがまったく楽しめないということはありません。要約するとこの作品、悪いデジモンになってしまったウォレスのデジモンを倒すというお話でしかないからです。子どもが楽しめる要素といったらそこしかないと言えばそれまでかもしれませんが、その代わり、戦闘シーンはすごく力が入ってます。デジモンが動く動く。前作の【僕らのウォーゲーム】なんかは、実はデジモン自体はほとんど動いていませんでしたが、本作はめちゃくちゃ動きます。こんなものを大画面で見せられたら、ストーリーなんて二の次です。おまけにチョコモンの不気味さでそれどころじゃないです。なにアレ怖い。雰囲気あり過ぎる……。
加えて、奇蹟と運命のデジメンタル。それまでの陰鬱な空気を払拭する黄金の輝きと一撃のカタルシス。この場面で子ども向けとして昇華できた気がします。こういう、子ども向けでありながら、大人になってふとそこに隠されたメッセージに気づける作品というのは、とっても良いものだとは思いますが……。(本作の場合は、戻れない過去)
とはいえ、当然ながら悪い点もあります。
本編との整合性を無視するのは構わないんですが、せめて本作内ではある程度整合性を考えて欲しかった。
パタモンとテイルモンの進化にしても、この映画内だけの理由で構わないから、説明が欲しかった。どこを観ても説明がないから、ご都合主義加減が悪い意味で目立ってるんですよね。
奇蹟と運命のデジメンタルにしても、せっかく前編で大輔とウォレスの二人に友情が芽生えていく過程を描いていたのに(むしろ前編はこれを描く為に作られたと言っても過言ではない)、デジメンタルの顕現に二人の友情が絡んでないのはどうなのかと……;
二人の友情をセラフィモンとホーリードラモンがデジメンタルにするという最低限の設定さえあれば、もっと単純に無理のある展開だって楽しめたと思います。ちょっと無視し過ぎですね……。