ウェスタンガール さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
ホモ・アクエリアス
1980年頃、ちょっと胡散臭い『ニューサイエンス』という分野がもてはやされた時期があった。
その筆頭論客がイギリスの生物学者“ライアル・ワトソン”である。
『生命潮流』はBBCのお墨付きを得て、TVドキュメンタリーにもなり、当時は『スーパーネーチャー』と併せて読むのが流行ったものだ。
彼の生物学の豊富な知識を最大限利用した、超自然現象を見てきたように話すスタイルに、SFマインドを刺激されたものだ。
そんな、虚実取り混ぜた確信を伴う妄想の中に、人類は海辺を“ゆりかご”にして進化したのではないかという仮説が、想像力を駆使して、何とも魅力的に紹介されている。
彼は高らかに宣言する。
いつの日にか、海岸の岩場のどこかで、最古の人類の化石が見つかるはずであり、彼らは“ホモ・アクエリアス”と命名されることになろうと。
ちなみに、女性の長い髪は、赤ん坊が潮に流されないよう包むためのものであり、根源的な記憶として、今も長い髪が尊ばれているというのだ。
“凪のあすから”の世界。
そこは、海と陸の境界が、それぞれの営みが連続して存在しており、一つの文化圏を形作っている。
海側、汐鹿生(しおししお)での人々の営みは、空気を海水に置き換えただけであり、物が浮き上がったり拡散したりすることもなく、さながら“スポンジ・ボブ”である。
逆に陸側は、建物や、乗り物の造形、そして配色や活字のロゴに至るまでが海を意識したものとなっていながら、全く奇をてらったものではなく、極々自然なデザインが施されており、とても好印象な世界観だ。
なお、自動車が全て三輪なのは、船の舳先をイメージしてと想像する。
ストーリーはどこまで“マリーワールド”であり、5人と2人、7人の少年少女たちが、それぞれの恋心を容赦なくぶつけ合い、傷つき、前を向くという展開が、二部構成26話に渡って延々と続いて行くことになる。
そう、視聴にはそれなりの覚悟が必要であり、人によればイライラが募ることは必至だ。
以下、若干、ネタバレっぽいので伏せておく。
{netabare}浦島太郎的展開までもが、7人の関係を複雑にしてゆくのである。
一部、二部でカギとなる二人のヒロイン、特に真のヒロインである、小松未可子さん演じる“美海”、彼女の恋心と凪の海が綾なす物語の行方を見届けてほしい。{/netabare}
素晴らしい脚本である。