tag さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
「人工的箱庭」世界の二人の観察者
終物語パート①から続く、最後の物語。続終物語は、その説明通りの残照。それはそれで、面白いです。化物語から続く、複雑で、逆説的で、寓意的で、プロットの張り方は、いつも逆方向、観衆の想定を覆す物語をありがとうございました。原作者、製作者の皆さんに感謝です。
この物語シリーズの感想で、「人工的箱庭世界」「シミュレーションゲーム」という感覚をずっと持ち続けていました。NPCのように、予定調和で動くキャラたちや、背景設定もそれを加速する。箱庭世界なら「観察者=製作者=神=プレイヤー(非NPC)」がいるはずと、ずっと思っていました。
でも、本編の中では、それを彷彿させるものの、直接的言及はほぼありませんでした。ここから述べるのは、私的解釈です。(原作未読)
観察者=プレイヤーの一人は既に決定かと思います。なんでも知っているお姉さん、怪異専門家の元締め、臥煙伊豆湖でしょう。彼女は、他の怪異専門家を駒として使い、多くのNPCにも強制権を発揮します。彼女の目的は最初わかりませんが、どうもいろんなキャラに言葉を投げかけ、物語を「調和的世界」へと導こうとします。彼女のゲーム目的は「調和」です。
もう一人のプレイヤーは誰か、複数いてもよいのですが、多分、一人だと思います。お姉さんの言うことを聞かない(自由意志を認められている)プレイヤーは2名います。一人はもちろん主人公の暦、そしてもう一人は、物語シリーズの最初にいた「怪異専門家」、忍野メメです。彼がお姉さんの言うことを聞かないアウトローであることは物語の中でも語られています。
では主人公の暦は何なのか、これは多分、ゲームの中の変数。最後の答えをどちらに導くかというゲームのターゲットかと。
なんでも知っているお姉さんの無双設定と比べると、忍野メメの持ち駒は限られています。忍野メメは物語シリーズの第一弾の化物語から退場する前、幼女吸血鬼(忍野忍)に知恵を授けます。本来、心の影の具現であり、どんな怪異が現れるかなんてランダムのはずなのに、まるで知っているかの如く、忍に伝えています。そう、彼も、なんでも知っているんです。そして、見た目劣勢の彼を助けるのは、羽川翼、ご存じ「何でもは知らない、知っていることだけ」の彼女。でも知っていることは半端ない。忍野メメは、最初、この翼をとても気にかけます。このゲームのターゲットである暦とくっつけようともします。そして最後は、悩んでいるのですが、最後の持ち駒は、忍野扇。「何も知りませんよ。知っているのはあなたです」の彼女。どうなのかなと今も思いますが、彼女の言動は、結局のところ、忍野メメに味方しています。かなり遠回りで、逆説的ですが。こうして決め台詞を並べても彼女はメメ側のキャラかと。こう考えると、メメ側には、キャラ中、臥煙伊豆湖を除き、無双設定の3名が、入っていると言えるかもしれません。
忍野メメのゲーム目的は何か?これは物語の中で語られています。「バランス」です。調和していないくても、バランスしていればよい。
誰しも後悔や、コンプレックスはある、それを克服し、あるべきところに収まれば、人は前に行ける。それは正しいですが、ほんとか?という投げかけがあります。この物語の全体の中でいつも存在する問いです。それに対し、忍野メメ(もう一人のプレイヤー)は、克服しなくてよい、それと共に「折り合い」をつければ、それでも人は前に行けると。それも逆説的かもしれないが、ハッピーエンドの一つであると。幸福と不幸は事の表裏、どちらかを選ぶことはできないし、どちらもやってくる。折り合い=バランスを取れば、それも後講釈かもしれないが、ハッピーエンド。
さてさて、この二人の観察者、臥煙伊豆湖と忍野メメ、大学のサークルの先輩と後輩。もしかして、この物語は、そのサークルのメンバーが作ったゲームなんじゃないか?って思ったりします。そう、映画マトリックスを想い出すのです。The Architect(=臥煙伊豆湖)と、Oracle(=忍野メメ)のように、マトリックスと言うシミュレーション世界における二人の観察者のように。暦は、差し詰め、そう主人公のNeoですかね?羽川翼は、Trinityですね、まさに。忍野忍は、最強Morpheus、Oracle(忍野メメ)から宣託を受けるところも似てますね。そして忍野扇は、Agent Smithです。
ヒロイン、戦場ヶ原ひたぎはどうした?彼女は?そう、一貫して暦のサポーターでしたね。でも、メインストーリーにはさほど関与しなかったというか、何と言うか。。。NPC、いえ、すいません、この複雑怪奇な物語の一服の清涼という感じかな。いつも、テンションいっぱいで視聴していたので、ガハラさん登場シーンは、ほっと一息ついていました。