「巌窟王 -がんくつおう(TVアニメ動画)」

総合得点
76.6
感想・評価
603
棚に入れた
3360
ランキング
695
★★★★☆ 3.9 (603)
物語
4.0
作画
4.0
声優
3.9
音楽
3.9
キャラ
3.9

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ネタバレ

STONE さんの感想・評価

★★★★★ 4.1
物語 : 3.5 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

大胆なアレンジの原作もの

 原作は未読。
 未読だが、概要や時代背景などは知っており、そのためにのっけから月が舞台だったり、
宇宙船が出てきたのは驚いた。
 そう言えば本作の原作を元にした宇宙SFのアルフレッド・ベスターの「虎よ、虎よ!」という
作品(既読)があったことを思い出したが、後で当初は「虎よ、虎よ!」をアニメ化しようという
計画だったとことを知って納得。
 作品舞台こそ未来的なものになったが、貴族文化や風俗などは原作が持つ近世のフランスの
それを引き継いでいる。
 スチームパンク作品でガゼットなどは未来的なものだが、風俗は近世風だったりすることが多く、
本作もそういった雰囲気を感じる。

 内容的には復讐譚だが、大半のこの手の作品は復讐者視点で描かれるのに対して、本作は
アルベール・ド・モルセールという少年の視点を中心としているところが面白い。
 この演出でモンテ・クリスト伯爵が謎めいた存在となり、その正体や目的が
ミステリー要素としてうまく機能していた感があった。
 ただ、復讐者視点で描かれる復讐譚はそれによって復讐者の感情が伝わりやすいため、決して
褒められるようなものではない復讐という行為も、受け手(視聴者、読者)にある程度肯定性を
持って受け止められやすいが、そういう点では視聴者がモンテ・クリスト伯爵に共感性を
抱きにくいような印象がある。
 そのせいか観ていてカタルシスも得にくく、逆の「復讐は虚しいもの」という感もなく、
感情的な締めは中途半端な印象。
 モンテ・クリスト伯爵に関しては巌窟王という人外の存在に憑依されていたような状態に
なっていたが、この設定は復讐の罪の部分を巌窟王に背負わせているような印象があった。
 なんと言うか、復讐を果たすという美味しい部分は味わいながら、ある種の責任は他者に
負わせているみたいな。

 一方、アルベールは視聴者視点を担う存在でありつつ、復讐者と被復讐者をつなぐ
キーパーソンだったり、自身も復讐者になってもおかしくない立場に立ちながらそこに
至らないというモンテ・クリスト伯爵と対比する存在だったりと、なかなか忙しい役どころ。
 正直、中盤までのモンテ・クリスト伯爵の盲目的な崇拝や自分本位の行動など、イライラする
要素が多々だったが、それだけに終盤の変化は頼もしさを感じる。そういう意味ではアルベールの
成長譚とも言える内容。

 作画が個性的でアート的な感じ。特にキャラの衣装がテクスチュアマッピングを使用したもので、
かなり印象に残る。まあ好き嫌いは別れそうであるが。
 音楽がストラングラーズのベーシスト、ジャン=ジャック・バーネルだったのは驚いた。一時、
ストラングラーズ好きだったもので。
 一見、UKパンクと巌窟王に違和感がありそうだが、ジャン自体はフランス人だし、
ストラングラーズ自体も中期以降はヨーロッパの美学を追求するような音楽性にシフトチェンジ
していったので、むしろ親和性があるか。
 本人が演奏しているか確認できなかったが、ED曲のバキバキしたベースはジャンらしいなと。

2020/07/12
2020/07/12 誤字修正

投稿 : 2020/07/12
閲覧 : 344
サンキュー:

2

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