薄雪草 さんの感想・評価
4.6
物語 : 5.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
ノートの1ページめ。
これは、恋に落ちた私のメモ書き。
あきれるほどの知性派のくせに、なんとなればピエロにだってなりきれる。
すれっからしを振る舞いながら、一分の反論も許さない片言隻句を言い放てる。
かぶいているように見せておいて、手の内は寸分漏らさぬようにわきまえている。
先輩。
私、ちゃんと言い当ててますよね?
才気にあふれたしなやかさと、
掴みどころのないしたたかさ。
何を考えているのか、底が知れない。
どんなポリシーなのか、見当もつかない。
まるで推し量れない人との、百忍千鍛の日々。
けれど、だから、迷悟一如を体得できました。
" 頑張った先には、何かが待っている "
あなたが、教えてくれたんですよ。
あすか先輩。
~ ~ ~ ~ ~
先輩には、事情があるって。
どうしてそのことを私に話すんだろう。
それに、ユーフォっぽいって何?
中途半端で存在感が今ひとつだから、何をするにしてもしなくても、気づかれにくいってことですか?
じゃなければ、付かず離れずなポジショニングを取っているって、私を責めているんですか?
それとも、何げに世話好きな体で関わるのを、要らぬお節介だって揶揄っているんですか?
それなら、よっぽど先輩のほうが、ユーフォっぽいです。
いやいや、そんな似たとこ話の掛け合いが目的じゃないですよ、ね?
~ ~ ~ ~ ~
「お母さん」って、表向きなら言える。
「お父さん」って、普通には呼べない。
部員にも、滝先生にも、話せない。
それが、先輩の " 事情 " 。
私へのメッセージ。
~ ~ ~ ~ ~
宇治川の川面をなでるように、そのメロディーは誰かを愛おしんでいる。
その旋律に、自然と身体を預けたくなる。
その曲調は、深く心に語りかけてくる。
その息遣いは、遠い憧憬をやり取りしている。
その演奏は、北宇治を全国へと押し出そうとする。
その響きは、あまりにも近くて、ありあまる豊かさで、あまりある胸のつかえを、私の脳裏に刻みつけた。
その瞬間に、私は、恋に落ちたんだ。
これから先、何度でも、この気持ちに立ち返るんだ。
~ ~ ~ ~ ~
" 響け! ユーフォニアム "
お父さんが、先輩に託されたノート。
その1ページを、今度は、私が引き継いでいく。
北宇治で作りだす音を、全国に響かせたい。
それが、先輩との絆で、私への証なんだ。
~ ~ ~ ~ ~
こんなに、長くて、
不思議と、短い1年でした。
ぜったい、面倒くさい "1年 " でした。
だからって、「さよなら」は言いたくない。
言ってほしくない・・・。
けれど、ノートの薫陶は、
" 鼓吹に努め、その響きに、胸を高鳴らせること " 。
それに、先輩との日々は、
知らないうちに、満タンにしてくれていたのです。
私の『容(かたち)』を。