シャベール大佐 さんの感想・評価
3.9
物語 : 3.5
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
いちおう探偵物だけど、友情ドラマとして観たほうが楽しめるかも
歌人の石川啄木が探偵となり、同郷の親友・金田一京助を助手のようにして、様々な事件を捜査していくミステリーアニメ。全12話。
形式は、推理小説などによくある連作短編。1つの事件はそれぞれ1~2話で解決しますが、ストーリー全体を通しても趣向がある、といった感じ。現実の啄木は明治45年没ということなので、おそらく時代設定は明治末期だと思われます。
この作品、観始めてまず気になるのは、啄木の徹底した「クズ」っぷり。真面目に仕事をせず、常に金欠状態で、適当な嘘を並べて友人から大切な金を借り、それを下らない使い道に浪費して、その嘘がばれても悪びれるところがない、といった描写の数々にはあきれるばかりです。その啄木にとことん甘い、お人よしの京助も含めて、序盤は正直ちょっと嫌悪感がありました。ただ、観続けていくと、啄木が歌の才能以外は本当にどうしようもないダメ人間であるという認識は、視聴者だけでなく作中の人物たちにも共有されているので違和感はありませんし、そんな啄木を誰よりもよく理解して、騙されることもわかっていながら、なおどこまでも支え続けていく京助の姿には、その行為が正しいかどうかは別にして、一種の尊さのようなものすら感じて、決して共感するわけではないけれど、そういった友情の在り方も、これはこれで認めるべきなのかもしれない、なんて思ってしまいました。一方、推理物としての個々のエピソードは、解決してもスッキリ感や納得感があまりなくて、それほど出来が良いという感じでもなかったです。
作画は、風景がとても綺麗。全体の色合いが素敵ですし、真っすぐ揃った線も気持ちよくて、啄木たちが住む下宿「蓋平館」の様子など、絵自体に魅力がありました。声は、主役の浅沼晋太郎がなんだかムカつく声で、キャラに合っていたと思います。音楽は、EDのゴンドラの唄には賛否ありそうですが、個人的には嫌いではなかったです。
最後まで観終わって、まあまあ楽しめました。もしかしたら、ミステリーとしてよりも、啄木と京助の友情ドラマとして観たほうがいいかもしれません。いちおう付け加えると、BL臭さは全く感じない作品でした。