「妄想代理人(TVアニメ動画)」

総合得点
70.7
感想・評価
803
棚に入れた
4201
ランキング
1512
★★★★☆ 3.6 (803)
物語
3.7
作画
3.7
声優
3.6
音楽
3.7
キャラ
3.6

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ふぁんた さんの感想・評価

★★★★★ 4.9
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 4.5 キャラ : 5.0 状態:観終わった

膨張し拡散するパラノイア

日本最高峰のアニメ監督の一人である今敏監督のTVシリーズ。


今監督がテーマにしている精神のゆらぎと脆さ、
現実と妄想の境界を行き来する描写。


都市伝説の伝搬ー、、
例えば昔流行ったこっくりさんのように。

こっくりさんは明治初期、伊豆の港町でアメリカ人がテーブル・ターニングをしていたものを
船員たちが各地に伝播していったものです。
伝播過程で途中で止めると狐に憑かれるなどの尾ヒレがついたり、
五十音を書いた紙に硬貨など様式が確定されていきました。

完全に起源がはっきりした都市伝説にもかかわらず、
(明治時代の妖怪博士、井上円了によって謎が解明されている)
途中でやめたがために発狂し、あたかも狐に憑かれてしまい精神を病んだ人々や
こっくりさんの答えに縛られ、それに即した行動をとってしまう人々など
(実際に離婚してしまった人もいる)

うわさや妄想が現実の人々に影響を与え、
あたかも本当にそれがあるかのように、盲目的に信じ言動が左右される人々、、、



見事に人々の精神の危うさをアニメーションに落とし込んだ稀有な傑作です。



少年バットという都市伝説が伝搬し、膨張し、
あるものは被害を受け、あるものは偽りの少年バットとなり人を襲い、
そして精神に異常をきたし、、


ある種の集団ヒステリーのような状況に陥っていきます。

これに伝道者が加われば新たな宗教となるのでしょう。



そして目を見張るほど挑戦的な脚本と演出。
全体として刑事の猪狩と馬庭が少年バットの真実を追うのだが、
各話オムニバスにそれぞれ少年バットという、うわさに翻弄された人々が描かれていく。


特筆すべきなのは、各話ごとにかなり内容がぶっ飛んでいます。
ゲームの世界に入ってしまったり、古き良き紙芝居の昭和になったり。

しかも登場するキャラがみななかなか一筋縄ではいかない感性で、
でも、どこか色々な漫画、アニメ、ドラマのオマージュのような言動をしていたりする。



個人的に好きだった演出は猪狩の奥さんと馬庭の問答のシーン、、

寺山修司の「田園に死す」のクライマックスです。
この作品も虚構がおり混じった何とも形容し難い素晴らしい作品です。



最高のop
今監督が愛した天才平沢進の楽曲に合わせて、
各キャラたちが笑い続けるop

平沢氏のシャーマンのような歌声と合わさって
シュールで背筋が凍るような不気味さがあります。

アニメのopとしても最高峰のものだと思います。


今監督の早逝には涙しました。
日本アニメ界だけでなく世界的な大損失だったと思います。

独特の切り口で、全ての作品が素晴らしい今監督の作品を一人でも多くの人に楽しんでもらえたらと思います。

投稿 : 2020/07/06
閲覧 : 244
サンキュー:

4

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