ウェスタンガール さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
右手にはじめちゃん、左手にカッツェさん
ネットは人々の相互理解を深め世の中を良くする。
時空を超えた意見交換が無知と偏見を解消し…、SNSが標榜する理想卿である。
しかし、同時に、我々がリアルに立ち向かう力を失う時、デストピアへ至る先兵となるのもSNSであるという皮肉。
選択的接触という負の力場が相互不信を増長し、横溢する罵倒と中傷。
「カッツェさん降臨!」
内田真礼さんが演じるドンピシャのボクっ娘“はじめちゃん”と、宮野真守さんが熱演する強烈なイカれキャラの“ベルク・カッツェ”、二人の能天気な、しかし緊迫感に満ちた掛け合いが、巷に溢れる下手なアクションを凌駕する。
全編を通して“はじめちゃん”が自問し続けること。
「ヒーローって何っスかね~」
アメコミも含め、世界中のヒーローに突き付けられた問題に対する一つの回答が示される。
もちろん賛否はあろうが、数々のヒーローを生み出してきたタツノコプロが、それを見せてくれた、その勇気に拍手を送りたい。
人類は進化の中で自我を獲得し、主観について考え続けてきた生き物である。
極論するなら、自己幻想を抱きながら、共同幻想と言う社会の中を徘徊する存在と言っても良い。
そんな中、世紀をまたぎ、世論操作の権化と化したマスコミに辟易してきた我々の前に、それぞれが主張し、共感を得ることのできる“拡張器官”が現れる。
それこそがスマホとSNSという新たなツール、テレパシーの如く瞬時に幻想を拡散させることができるという意味では、天使にも悪魔にもなり得る絶対的な力を獲得した!
その気になったのである。
しかしそこには、自分の声が、あらゆる方向から増幅され返ってくる閉鎖空間、すなわち“エコーチェンバー”が存在するだけであるということに気付かずにいる。
そう、我々は新たな幻想の中で生きる道を選んだに過ぎない。
全てを受け止めて、“はじめちゃん”は前を向くのである。
12話にディレクターズカットである12.5話を加えた、大変面白い作品であった。