でこぽん さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
うまくなりたい…うまくなりたい…その悔しさが心に響き渡る
これは響けユーフォニアムのダイジェスト版です。
13話のテレビ内容が、およそ2時間分にまとまっています。
音楽は美しい。音楽は楽しい。だが、完全な実力主義の世界です。
だから音楽に携わる人にとっては、悔しい思いをすることが結構あります。
この映画では、その悔しさを数箇所見せつけられます。
■香織と麗奈のソロ対決
美人で優しく後輩の面倒見が良い中世古香織。
彼女は吹奏楽部で誰よりもトランペット吹奏が上手だったにもかかわらず、今まで一度もソロで吹奏したことがありません。
今までは下手な先輩が吹奏していました。
「今年こそは自分がソロ吹奏をしたい。」 それは香織の強い願いでした。
でも、そんな彼女の願いを粉々に打ち砕いたのが新入生の高坂麗奈。
彼女のトランペット吹奏は、誰が聴いてもほれぼれするほどの音色です。
香織を慕っている吉川優子ですら、麗奈の吹奏が香織のそれよりもはるかな高みにあることがわかってしまう。
だって優子は音楽が好きだから。音楽を愛しているから。自分の心には嘘がつけない。
だから優子の心は複雑でした。
誰よりも謙虚な香織。
そんな香織が唯一自我を貫きとおして認めさせた再オーディション。
彼女は、おそらく自分を納得させるための情報が欲しかったのだと思います。
広いコンサートホールだと、学校で吹奏するよりもはるかに音が響き渡る。
それは、吹奏力の違いが明らかになることを意味している。
だから再オーディションで麗奈の吹奏を聴いた瞬間、香織は自分の負けを認め、優子は悲しい顔をした。
香織は精いっぱい努力した。力を出し切った。だから納得できたのでしょう。
■久美子の悔しさ
ユーフォ担当の久美子には、上手に吹奏できない箇所があった。
だから少しでも時間があれば、そのパートの練習をした。
練習は嘘をつかない。そのかいあって久美子の吹奏力は、少しずつ上達した。
コンクールまであと数日と迫ったとき、久美子はこのままならばコンクール当日までには上手に吹奏できる自信があった。
しかし、滝先生から突然に突き付けられた言葉は、久美子の努力と自信とを跡形もなく消し去るほどの厳しい命令。
反論の余地もなく、滝先生はみんなの指導を再開する。
香織のときの優子のように久美子を弁護するものは、誰もいない。
それは、皆が冷たいのではなく、ここが実力第一の世界だと誰もが理解しているためだ。
ここにいる者たちは皆、オーディションで落ちた人たちの犠牲のうえにいる。
だから、久美子の悲しみや悔しさは、夏紀のそれに比べれば小さいはずだ。
それでも悔しい…。それでも悲しい。
自分が惨めだった。恥ずかしかった。この場から逃げ出したかった。
そして、悔しくて悔しくて、悔しくて悔しくて…たまらなかった。
ようやく一人になったとき、まるで示し合わせたかのように流れ落ちる涙。
うまくなりたい…うまくなりたい…
久美子は悔しがり、大粒の涙を流し続ける。
そのとき久美子は、中学時代に麗奈が悔しくて泣いたときの気持ちが、ようやく理解できた。
うまくなりたい…うまくなりたい… それは全ての音楽家の願いであり、苦悩だった。