たわし(爆豪) さんの感想・評価
4.6
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
ハクは千尋の死んだ「お兄さん」
「千と千尋の神隠し」はジブリのアニメの中でも最も難解で、一度見ただけでは理解できない情報量と「暗喩」に満ちている。
湯婆婆が経営する「湯屋」は日本の江戸時代に女性が性的に奉仕をしたと言われる吉原の風俗だということも、千尋が迷い込む神の世界は平成のバブル期に乱立した「ハコモノ」レジャー施設だったりと、今やそれが廃墟となり、不気味な心霊スポットになっていることも、言ってみれば本作はホラー映画であり、「呪いのビデオ」や「本当にあった怖い話」などと同じくらい当時流行っていた「ジャパニーズホラー」の系譜である。
そしてなによりも、本編に出てくる「カオナシ」と呼ばれる妖怪と、幼い頃千尋を救ったと言われる湯婆婆の丁稚こと「ハク」の正体であるが、
「ハク」は千尋が幼い頃溺れたコハク川の主であり土地神である「饒速水小白主ニギハヤミコハクヌシ)」であるとあとで判明するのだが、
本編冒頭で、「千尋の母親が千尋に余りにもそっけないこと」「千尋が溺れた記憶がなく母親から後で聞かされたこと」「千尋が溺れたシーンで小さい子供の手のひらが千尋を救ったこと」などを考えてみると、ハクの正体は「千尋がまだ物心つかない時に、千尋に変わって溺れ死んだ実兄」であり、これによって冒頭の両親のシーンや、なぜ夜にならないと見えるはずもない神様が「ハク」だけ千尋には見えたのか。。など、合点のつくシーンが多いのである。
それだけ考えてみても、たかだか子供向けのアニメの中に、それだけの重厚な伏線を用意しているのは。。宮崎駿だからである。