くろゆき* さんの感想・評価
4.8
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
戦わなきゃ守れないものもある
前作の「Reflection」の後編となり、2部作の完結となる本作ですが、
視聴した感想を先に述べると、非常に満足した気持ちで劇場を後にできたという感じですね。
まず良かった所を述べると、本作は前作に登場したアミタ&キリエの姉妹やマテリアル達、
黒幕として本性を現したイリス、前作のラストで目覚めたユーリなど様々な
キャラクターの関係性が描かれており、物語が進行していき作中の謎が解明されるたびに
驚きやキャラ同士の絆が描かれていたのが素晴らしかったです。
特に放映時間後半に真の黒幕が登場してからはジェットコースターのような勢いと盛り上がりで、
一切スクリーンから目が離せない状態でした。
キャラクターのエピソードについて幾つか挙げると。
前作では無関係な人間に対する配慮が欠けていたレヴィがフェイトの「例え関係ない人でも
その人にも大切な人がいて、自分もいつか大切な人になるかもしれない!」という言葉を受け止めて
管理局員を助けるシーンは彼女なりの成長が感じられたし。
続くマテリアルvsユーリ戦では、マテリアル達が実は猫としてエルトリアで生きており、
彼女達の恩人であるユーリを守れるだけの力を常に欲しがっていたという過去回想が描かれ、
ユーリを命懸けで助けようとする忠義心は心に響くものがありましたね。
前作ではイリスの嘘に踊らされていたキリエが、イリスを友として助けようとするシーンも見所の一つで、
何故自分を利用して裏切ったイリスにそこまで肩入れするのかというと、イリスもまた前作の自分と同じように
信頼していた人に裏切られた存在であり、キリエにはその辛さが解るからなのでしょう。
イリスは初めてキリエと出会った時から利用する算段を立てていたらしいけど、彼女と過ごした
時間は全てが偽りではなかったのだと思います。
ここまでオリジナルキャラばかり語ってきたけど、主人公である高町なのはもしっかり活躍しており、
地球に向けて放たれる衛生砲を止める為に単騎で宇宙まで飛び出し、仲間や家族、友人を守るために
命懸けで阻止する姿は紛れもなく本作の主人公なのだなと再確認させられました。
なのはシリーズでは話の通じない相手に力と力でぶつけ合うような展開が多いですが、なのは自身も
本当は嫌で、それでも大切な人達を守るためにその苦痛と戦っていたんだなと。
フェイトも今までの劇場版に比べると活躍は控えめだったけど、ラスボス戦でなのはと共闘したり、
ラストで重傷を負ったなのはを救出したり、さすがの正妻っぷりを発揮してくれましたね(苦笑)。
戦闘シーンも前作以上に見応えがあり、まさに「Detonation(爆発)」の名に恥じない激戦でした。
しかも本作は挿入歌を4パターンも使用したっ徹底っぷりで、
個人的にマテリアルvsユーリ、キリエvsイリス戦はかなり盛り上がりました。
惜しかった点を敢えて述べるなら、キリエやマテリアルたち味方キャラが増えた
(前作から既に10人近くいた)為、時間内に動かせるシーンが限られてしまい、
はやてやヴォルケンリッターがあまり目立った活躍をしなかった事ですかね。
イリスとユーリの過去や、エルトリアの惨劇、マテリアル達の正体など前作の謎は概ね解消された中、
真の黒幕だった所長が何故あそこまで歪んでしまったのかは作中唯一の謎でしたが、流石にあれだけの事を
やらかした彼までもが被害者だったでは作品に暗い影を落とすと同時に、擁護しきるのは不可能なので
徹底した悪役として描写するのは止む終えないと思います。
本作は前作の「Reflection」から続く長編映画であり、アミタ&キリエ、マテリアルなどゲームの
オリジナルキャラを逆輸入する形で登場させたうえ、原作とは設定もかなり変えられてはいたものの
全員が相手への思いやりを持てる魅力的なキャラとして描かれていたのが良かったです。
前作ではヒールキャラという感じで本性を現したイリスもキリエと和解し、
エルトリアに帰った後は新しい家族として受け入れられたという友情や家族愛をテーマとした、
「リリカルなのは」らしい締め方だったのではないでしょうか。