World さんの感想・評価
4.0
物語 : 3.5
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 3.0
状態:----
新海誠というブランド
空前絶後の大ヒットの次作。その期待感は、とてつもないものだった。
私も、さぁ次はどんなだ!というワクワク感を胸に、視聴を開始した。
結果…そのハードルを、今作は超えた。期待を裏切られたということは決してない。推しも押されぬ秀作だ。…だが、予想を裏切られれる程では無かった。
映像、音楽、ストーリー。全ての調和がとれた、素晴らしい作品。前作となんら遜色ない。
しかし、「新海誠の作品」というジャンルから逸脱するような、そんな作品ではなかったのかもしれない。
満足感は確かにある。だが、身を震わせるような感覚は無かった。
イチローがまた200本安打を打った。ウサイン・ボルトがまた9秒台で走った。吉田沙保里がまた金メダルをとった。
そんな感覚なのかもしれない。期待値から、とてつもない偉業を、つい矮小なものと感じてしまう感覚。
感覚が麻痺してしまっている。
それ程、新海誠の作る世界というものが素晴らしいということなのかもしれない。
私は特に、キャラクターが気になった。
人間の粗を、あえて演出している様に感じた。
この作品のキャラクターは、全員信念を持っている。皆、それぞれ意思なく動いているように見えて、実はそうではない。自分の欲求を(精神的なものも)満たすために行動している。
一見、それは素晴らしい様に見える。が、裏を返せば全ての面から見て矛盾が無いということ。それは不自然だ。綺麗すぎる。
パッと見は素晴らしいかもしれないが、人は時に素晴らしく、時に残酷で、冷酷だ。
自らの利益の為や欲求の為ではなく、気まぐれで、その時の気分で、行動を起こす。それは、別に大きな事ばかりでは無い。
気分でつく嘘。なんとなく、ゴミを蹴飛ばす。ムカついてて、蟻を踏み潰す…
そんな、理由ない残酷な行為を、罪悪感なく行えるのもまた、人間だと思う。
そんな、人間の不条理な部分を「自然に」感じることが出来ない。なので、作られた物語なのだという先入観を拭うことが出来ない。
前作の方が、その面がより自然に描かれていたように思う。今
その点が気になった。
ストーリーも、いわゆるセカイ系になると思うが、ほんのすこーしだけ壮大感が足りなかったかなぁと思う。
要は、見てる側が凄い!と思えばそれで良い訳だ。結末までの不明確な点をいかに上手くボカすかがセカイ系ストーリーにおいて重要だ。過程は重要だが、それよりもインパクトが欲しい。
だが、今作はボカしがちょっと無理やりだったかなと思う。
まぁ、そんな事言っても、結局はどんな作品も無理やりなんだろうけれど…
無理やりだと見ていて感じてしまうと言う事は、上手くボカせていないのでは…と思う。
超理論を「なるほど!」と思わせるようなロジックや演出がもう少し欲しかったかなー…
気になって楽しめないほどでは無いが、クライマックスの盛り上がりを少し損ねたかなという印象。
散々悪い点ばかりを書いたが、この作品が秀作であるということは重ね重ね申し上げたい。
超美麗な作画、作風にマッチした音楽、スピード感、豊かな表情、キャラクターに合った声優…
全てが高次元。これに文句を付けるのはどうかとも思うが、「新海誠」の作品であると言うことに最大限の敬意を評して、評価4とします。
次回作もあるとすれば、必ず見るだろう。それだけの魅力が、新海誠の作品にはある。変わらずワクワクしながら待っております。