kazz さんの感想・評価
3.7
物語 : 4.0
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 4.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
虚構のバラニウムと現実のジスプロシウム
原作未読。
ガストレアと呼ばれる感染力を持つ怪獣を倒すために民警と呼ばれる組織に属する主人公がガストレア因子をもつ子ども(美少女)たちとともに頑張ります。
コメディ要素でクスッとさせてくれながらも、ガストレア因子を持つ子どもたちの境遇や木更ちゃんの抱える闇にどうしても明るい結末を思い描けない本作。原作者は未完のまま消息を断ち、主人公も絶望して延珠ちゃんの小さなひざにすがるばかりです。
しかし、光明はひとつだけあります。
それはバラニウム枯渇問題。
バラニウムとは本作においてキーとなる架空元素で、ガストレアを弱体化させる特殊な磁場を発生させるようです。
アニメ本編からは外れてしまいますがWikipediaでは、バラニウムが枯渇したら将来的に人類同士でこれを奪い合う戦争が起こる可能性というものが示唆されていますが、日本の材料技術者を見くびり過ぎです。
かつて中国が自動車のモーターの磁石に必要なレアメタルであり99%の産出量を誇る元素、ジスプロシウムの輸出を制限するという暴挙に出たことがあります。その際、ジスプロシウム輸入量の100%を中国に頼ってきた日本では「元素戦略プロジェクト」の一環として、ジスプロシウムを使用しない材料の開発が行われ、材料技術者はこのレアメタルを使わずにジスプロシウム添加磁石と同等以上の性能を持つ磁石の開発に成功したという実績があり、現在でもその研究は進んでいます。
奇しくも同じ磁性材料であるバラニウム。
宇宙空間で材料(主人公の義体の超バラニウム)を、たった総額100億円で合成する技術が確立されているならコモンメタルを使ってバラニウムと同等、あるいはそれ以上の性質を持つ材料が開発される事は十分にあり得ます。戦時下であればなおのこと。
原作の発表は2011年、ジスプロシウムを使用しない材料研究が始まったのは2012年、そしてその後の成功。今だからこそ言える後出しじゃんけんな批評となってしまいますが、SFは観るものに未来を予見させてくれるものという側面もあります。
この点では、現実が虚構に打ち勝った=未来が必ずしも悲観的なものとは限らない、と言えなくも無いのかな、と思います。