タマランチ会長 さんの感想・評価
4.2
物語 : 5.0
作画 : 4.0
声優 : 3.0
音楽 : 5.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
秀逸なシナリオ。時代考証をしっかりとして当時のフィレンツェの空気感を出せれば名作になったかも。
結論から言うと、シナリオがすこぶる良い。貴族の家に生まれたが親は良い家に嫁がせることしか考えておらず、自分の描きためてきた絵を燃やされて家出。巷では女性蔑視の風潮が厳しく、なかなか仕事にありつけないが、変わり者の画家のところに転がり込むように弟子入り。高級娼婦にプロ意識を学んだり、わがまま放題の貴族の娘と打ち解けたり、持ち前の明るさとブレない意思、真面目な仕事ぶりでキャリアを積みあげる。最終回で病床に伏してしまった師匠の絵を完成させ、師匠にも家出した家族にも認められる。アルテの、この天井画には、自分のこれまで出会い、支えてくれた人たちを描き入れているんだという告白は、最終回にふさわしいサプライズエピソード。画家として名声を高めるような展開ではないけど、等身大の立身出世できれいに〆られていました。これだけで映画になりそうです。
私的にはわがまま娘カタリーナとのエピソードはツボでした。男尊女卑の時代の中、夫の意に反して娘の意思を尊重しようと毅然と意見した母親が、娘を前にして手を震わせながら「こういうときに、どうしていいかわからない」と言います。それに対し、カタリーナは「強く抱きしめてほしいです。」と言い、母子が抱き合います。普通の家族なら当たり前にできたことすらこれまでなかったわけですから、この瞬間に初めて2人の間に母子の絆ができた、感動的なシーンでした。これは最終話のアルテと母親の和解にもつながる伏線のようにも感じます。
ただ、工房の門をたたくアルテが、判で押したように追い出されたり、箱庭のようなフィレンツェの街並みだったり、類型的というか、テンプレな世界観で、リアリティに欠けていたのは残念でした。といっても、多分少女漫画ですから、分かりやすさという点ではそれでいいのでしょう。でも、このシナリオでリアリティのある描写がなされれば、それこそ全盛時の世界名作劇場を彷彿させるような名作になったかもしれません。
EDの曲調がとても優しげで、私の大好きなシンガーソングライター「相曽晴日」の曲を思わせ、とても好みでした。
平凡な作品だとは思いますが、上記シナリオなど評価して良作とします。