ぺー さんの感想・評価
3.7
物語 : 3.5
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 4.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
令和版『世界名作劇場』
原作未読
なんというか素直な作品。主人公アルテは清々しいくらいに裏表がない。
なにげに小松未可子さんが主演はってる作品は私には初かも。
趣味が高じてイタリア語をお勉強した身にとってはルネサンス期のフィレンツェという餌に食いつかない理由はありません。視聴動機はそんなとこです。
素直でウブな娘を表現したいからなのか、男性の手がふれると顔を赤らめるくらいならまだしも距離が近づくと露骨に動揺するみたいなチョロイン設定を除けば、懐かしき『世界名作劇場』のラインナップに推挙できそうな安定感を感じます。
『世界名作劇場』といってもある一定の年齢層以上でないとピンとこないと思います。小学校の図書館に所蔵されてるような児童向け文学をアニメ化したシリーズをその昔やってたんですよ。
実はこれって皮肉でもあって事前の期待値を上回らずこの解釈に落ち着いたってところもあります。
徒弟制度の職人全盛のルネサンス後期のフィレンツェ。芸術家というより職人の色合いの強い絵画業界は男性主導の社会。そこに貴族出身の娘が割って入ってくお話です。因習・慣習やら障害がある中で女性の自立を謳った作品であることは見てとれますし、苦難を乗り越えてく彼女の成長譚でもありました。普遍性ある良いテーマですよね。
だからこそ背景を大事にしてほしかったと思います。16世紀フィレンツェが舞台。人権なんて概念が定義されてきたのは乱暴に言えば近代以降と最近です。ルネサンス期にその意識が乏しいのは当たり前で、むしろアルテが女性を理由に不遇をかこうのはそれくらいの理由でしかなく、薄いのです。
・昔だからしょうがないよね~
・絵描きだから時代をルネサンス期にしとこ
これ以上のものを感じさせてくれたら『世界名作劇場』+αになってたかと。
ルネサンスといえばまずはフィレンツェ。後期はヴェネツィアが隆盛していったのが史実です。全編完走された方はピンとくるかもしれませんがストーリー展開上このへん注釈あるだけで違っていたと思いませんか?
繁栄の源でもある都市の守護者メディチ家に触れてないのも「どうして舞台がフィレンツェなのか?」を見えにくくしてますし、今のイタリアのイメージで描かれてるため都市国家が林立している当時の情勢を汲んでおらず見誤っていたと思います。
とどのつまり、時代考証を細かくやることでアルテ(女性)の置かれてる状況をより深く理解できて、そこで生じた成長や自立についてはより深い感動を覚えたであろうという仮説です。
フィレンツェのヴェッキオ橋やドゥオーモ。ヴェネツィアのリアルト橋。観光資源でも有名なやつはところどころに顔を出しますので旅行で訪れたことのある方は懐かしく思うかもしれませんね。ロケハンは頑張ってたほうかと。
ここまで「ここ頑張ってくれ~」という注文ばかりでしたが、不足分を抜きにしても楽しめましたよ。
全体を通して無味無臭というわけではなく、序盤と最終話でのアルテを比較しても、力強く意思を感じる目つきになってましたし、背筋もピンとしてなにかを乗り越えた感のある良い佇まいをしてます。それにきっちり1クールでまとめてくれたことには感謝です。
目安としては第4話までは観てほしいです。子供と一緒に観ることのできそうな安心仕様のため物足りなく感じたかもしれない序盤。単純な能天気キャッキャウフフとは違うざわつきが挿入される回に該当します。ここを経験してから判断して欲しいですね。
繰り返しになりますが素直な作品。そして完走後ちょっと「頑張ってみようかな」とポジティブな気持ちになれる佳作です。
視聴時期:2020年4月~6月
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2020.06.27 初稿
2021.03.07 修正