「イエスタデイをうたって(TVアニメ動画)」

総合得点
76.5
感想・評価
482
棚に入れた
1752
ランキング
703
★★★★☆ 3.6 (482)
物語
3.5
作画
3.7
声優
3.7
音楽
3.5
キャラ
3.5

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ネタバレ

雀犬 さんの感想・評価

★★★★★ 4.3
物語 : 4.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 4.0 キャラ : 3.5 状態:観終わった

あいかわらずなボクら

冬目景のコミックス(全11巻)のアニメ化作品。原作既読。

アニメーションの出来栄えは素晴らしかった。大満足。
繊細に描かれる等身大のキャラクター。
一進一退を続けるストーリーのもどかしさ。
メランコリックな雰囲気。
どれをとっても
『ああ、「イエスタデイをうたって」だなぁ』と見事に感じさせる。

冬目景といえば粗めでデッサン風の絵が持ち味なんだけど、
本作の人物作画はをうまく冬目景の画風を表現している。
公式サイトによると仕上げでこの味を出しているらしい。

キャスティングもすごく良かったよね。
優柔不断で、フラフラしている主人公。
溜息や、言葉を濁らせる演技も本当にリクオっぽい。
漫画で読んでるとたまにドツキたくなるんだよ。できないけど。
シナコがイヤ~な女なのは原作そのまんまだし、
浪君もやっぱり自己中心的で青臭さが匂い立つ。
「そうそうこんな感じだったなぁ」としみじみ思い出す。

そして何といってもヒロインのハル。本当に健気で可愛らしい。
時折感じる危うさも含めて、完璧にハルだ。
あのめんこい、めんこい、ハルちゃんが画面の中にいる。
これはちょっとした奇跡ですよ。奇跡。
ファンなら冬目景のキャラクターが動いているというだけで
感涙ものなんじゃないかな。

本作は恋愛が話のメインなのだけども、
展開は遅く大きな出来事もなく淡々と進んでいく。
煮え切らない態度を取るリクオとシナコに、
人によってはフラストレーションがたまるかもしれない。
だけども、このグダグダ感こそ「イエスタデイをうたって」なのであって、
恋愛ドラマでありながら「停滞」が主題という異色の作品なのだ。

いくらハルにアタックされても大学時代の片思いの人から心を動かさないリクオと、
亡くなった幼馴染のことが忘れられないシナコは、
お互いに変わりたいと思いながら、つかず離れずの関係を続けてしまう。
リクオが振り向くのを待ち続けるハルもまた変化を拒んでいるキャラといえる。

彼らの前を通り過ぎていったミナトとユズハラ。
ミナトは「失恋することに成功」して、なんとか前に進んでいく。
ユズハラは「いま、ここ」を刹那的に生きている人物として登場する。
はっきりしない微妙な関係を続け、ここではないどこかを探す3人とは好対照だった。

変わりたい、そう思うだけで変われたら人生は楽だろう。
でも実際のところ、僕たちはたとえ変わりたいと思っても、
「現状維持でもいいのではないか」という誘惑が常にあり、
心の中でせめぎあっている。
そうして誘惑に打ち勝てず、
昨日をそのままそっくりコピーしたような今日を過ごしてしまう。
この変わりたい・変わりたくないの均衡を崩すには
ある程度強い意志の力が必要だ。

リクオは縁があってコンビニバイト生活から脱却し、
好きだったカメラ関係の仕事に就くことができたが
そこに本人の意志はあまりない。

結局のところ、自分で能動的に変わることなんてまれで
むしろ他人の力や偶然などで受動的に変わるのが
普通の生き方なのかもしれない。

・・・まぁそんなことをぼんやり考えながらこのアニメを見ていたんだけど、
あんまりハルが健気で可愛らしいものだから、
当然情が移ってハルがどうにも不憫になってくる。
リクオはほんと駄目な奴だし、シナコにはやっぱり腹が立ってしまう。
ああもう、漫画版「イエスタデイをうたって」を読んでた時と同じじゃん。
俺もフラストレーションがたまってきた。

で、第12話が最終回なのだけど、残念ながらアニメは尺不足に陥って、
話がワープしている感が果てしなかった。
急展開で締めるより最後までグダグダやっている方が
この作品らしかったように思ったけどまぁ仕方ないかな。

それよりも、この作品で僕が一番印象的だったシーンが
カットされていた方が残念だった。
{netabare}
それがハルがリクオにキスした後、「タバコくっさぁ~~~」と涙目になるシーンなのだ。
眠り姫は王子様のキスで目を覚ましたけど、
ハルはタバコくっさいキスで恋という錯覚から目を覚ますってね。
{/netabare}

恋とは錯覚なり。では愛とは何ぞや?

投稿 : 2020/06/24
閲覧 : 370
サンキュー:

27

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