退会済のユーザー さんの感想・評価
3.4
物語 : 3.0
作画 : 5.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
三十路のvirginity
アニメ界孤高のロックンローラー新海誠が満を持して制作したメインストリームへのメジャーデビュー作。完全に個人で制作した"ほしのこえ"から順当にステップアップしてきた彼は前作のスマッシュヒットを受け、日本映画界の頂点でありファイナルステージ、"デートムービー"への挑戦権をついに獲得。
セルフプロデュースであった過去作を超える為、百戦錬磨のプロデューサーを迎えて制作された。主題歌は新海誠と同様の強烈なvirginityを発揮する人気バンド"RADWIMPS"。圧倒的なシナジーが産まれる強力タッグにより映画界の頂点を獲らんとする最強の布陣で制作されたのが本作である。
今回セルフプロデュースでなくなったとは言え、彼のvirginityは健在。美しい空と雲、美麗かつ詳細に雰囲気を語る背景。雨の雫、揺れる電線、閉まる遮断機など緻密な作画による美しいパーツ群はリアリスティックでありながらリアルに寄せ過ぎず、見ていて気持ちいい動き(アニメーション)に注力する事により違和感やストレスを一切感じること無く物語に没頭させてくれる。
美しい背景表現に全力を注ぎ、それらに登場人物の心情を雄弁に語らせるが、逆に人物表現は並といった作風が新海節。他人に興味が無くモノを愛する物理世界の住人であった新海誠の作品群が強烈で絶大な魅力を持ち得ているのと同時に居心地の悪さを感じる観客が多数存在するのは至極当然。
"童貞くさい"、"気持ち悪い"と言った批評は的を得ており、それこそが新海誠の本領である。本人もそんなことは当然わかって作っている。自ら「こんなものが売れるわけがない」とまで言っているのだ。尋常でない宣伝爆撃のおかげで興行成績はとんでもない数字を叩き出したが同時に強烈な批判も膨大に発生した。新海誠作品はアニメファンからしてもマニア向けだ。美しい画面と宣伝に騙された観客は数しれない。だがそれでいい。それでこそ新海誠なのだ。100人のうち99人がボロカスに叩こうとも、残り1人の生涯の1本になることを是とする。
そう、この覚悟が、この心意気こそが
"新海誠はロック"と言わせる根拠なのである。
多分。