「イエスタデイをうたって(TVアニメ動画)」

総合得点
76.5
感想・評価
482
棚に入れた
1752
ランキング
703
★★★★☆ 3.6 (482)
物語
3.5
作画
3.7
声優
3.7
音楽
3.5
キャラ
3.5

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ネタバレ

薄雪草 さんの感想・評価

★★★★★ 4.1
物語 : 4.0 作画 : 4.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

ナラティブで、進んでる。

あなたはオブザーバーでいたい?
それともストーリーテラーになりたい?
いやいや、エディターのほうがいいのかな?


本音を言うなら、漫画版のほうが作風をうまく引き出せているんじゃないかと感じています。
なぜって、読み手自身の "間" の活かしようがありますから。
でもアニメ版は、見たとおりの "間" の演出でしょ?


この作品は、シナリオやストーリーに目を向けるとなかなか厳しい評価になってしまうと思います。
でも、何となくなのですけれど、"ナラティブ" という視点で受け止めてみると、意外と味わいが出てくるように感じています。


ナラティブっていうのは、"じぶん語り" という意味なのですが、榀子も、リクオも、ハルちゃんも、みんなそう。
それぞれが、ナラティブで始まってナラティブで終わっています。
お互いの "間" を詰めないものですから、いつまで経っても見ているほうにシンパシーが立ち上がらないのです。


揃いもそろってナイーブな気質で、じぶんの言葉を選ぶことさえ精一杯。
もとより、それぞれのイエスタディに心を置いてきてるものだから、気持ちがピュアすぎて、ちっとも前のめりになれないでいます。

むつみ合えないし、お話が前に進まないのです。
じれったいですし、もどかしいですよね。



それで、少し考えてみました。

この作品が世に出ていたころだと思うのですが、2000年の流行語大賞に「ジコチュー」があったと思います。
そんな時代性のなかで、時流に乗り切れなかった榀子やリクオやハルちゃんが生み出されていたように思います。


ジコチューを逆説的に見返すと、"自己愛の萌芽" と言えそうな時期だったって思います。
社会規律や道徳観念が緩み始めていたのは確かでしょうが、とは言え、当時の若い世代にとっても、自己主張をどんなふうにして世間にアピールしていくかとなると、依然、戸惑いはあったでしょうし、そもそもでいえば、自己表現する場所や手段が、今ほど身近にはなかった時代でもありました。


今は、インターネットと端末機器の普及、そしてプラットフォームが発達したおかげで、いつでもどこでも自己表現が可能となりましたし、誰とでも共有できるようになっています。
でも、2000年頃は、ようやくインターネット料金がダイヤルアップごとの課金性から毎月定額制に移った時期です。
ましてやスマートフォンなんて、ね。


こんなことでも、体験していない方にとっては、榀子やリクオのユルイ思考性や、ハルちゃんの抑制された行動原理がよくわからないかもしれません。
でも、本作の時代性には、情報処理のスピード感や、行動様式の組立てに、隔世とも言えるほどの相違があるのは確かなことなのです。


その意味では、時代に取り残されたような3人に、今のリアルな感性や文化性を当てはめてシンパシーを感じ取るのはちょっと難しいのかもしれません。
でも、せめて3人のナラティブから絞り出される "エンパシー(相手を思いやる気持ち)" は感じ取ってほしいと思っています。


そんなわけですから、見ている側が、3人のナラティブを、心底で受け止められるか、あるいは上辺りでもいいので掬い取れるものなら、魅力的なコンテンツになるような気がしています。


最終話まで楽しめるといいですね。


見終わりました。
{netabare}

原作既読としては、片目を瞑るエンディングの演出でした。


ロウ君を含めて、それぞれが未来に踏み出したのに、榀子だけが、昔日のお作法を繰り返してしまった。

やっぱり好きな人の翳(きぬがさ)を忘れられなかったのでしょう。
そしてまだ、トラウマを上手く嚥み込められないのでしょう。


3人は、なんとか時計の針を進めました。
ですから、イエスタディを謳って、です。

でも、榀子の振り子は揺れないのです。
なぜなら、49%と51%の隙間に心を置いているから。
なので、イエスタディを詩って、です。


榀子の先々が・・・心配で仕方ありません。


ハルちゃんなんて・・・。
ハナから半矢の烏だったのに、ね。
{/netabare}

投稿 : 2020/07/14
閲覧 : 460
サンキュー:

24

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