森可成 さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
「キルラキル」を見ることは「最高のかつ丼」を食べること
「キルラキル」を見たら、
まず、その映像の情報量の多さに
面食らうかも知れません。
ガイナックス、TRIGGER作品に触れたことが
ある人間からすれば逆にキタコレ!と快哉を
叫ぶところですが、一見古臭い。
しかしうまいかつ丼を食べに
KITTEやヒカリエに行く人間はいない。
小汚い蕎麦屋にこそ、本当にうまいかつ丼はあります。
小汚い蕎麦屋の円形窓や一輪挿しに
何ともいえない味を感じるように
CGをあえてセル画調にした背景画、
古めかしい太字フォント、
澤野弘之の大袈裟なBGM
を楽しむべきです。
次に戸惑うのは話の密度でしょうか。
「キルラキル」の一話ごとの内容の密度は
週刊誌連載マンガ原作アニメで換算すれば
三話分に優に匹敵します。
しかもそれが2クール途切れません。
その余りのスピード感に
「結局何の話なんだっけ?」
となるかも知れませんが、
ちょっと待って頂きたい。
うまいかつ丼を出されて
いきなりがっつくのは不作法です。
まずおみおつけを頂き、心を静めてから
一番脂身の少ない方の端から食べるでしょう。
その圧倒的なスピード感の中でも
これって劇場版ですか?と聞きたくなるほど
のカロリーの高い作画は崩れません。
また三話に一度最終回と称されるように、
ピリオドを付けてくれる親切設計。
慣れるので安心して見ていれば良いのです。
そして視聴者が慣れた頃、
具体的には2クール以降ですが、
ストーリーは更に加速します。
ついにかつ丼をがっつくことができるのです。
その味はただひたすらに美味。
キャラクターの感情とリンクして天井知らずに
盛り上がっていくストーリー。
嫌が上でも高まる臭いセリフ。
感情豊かに演じる声優陣。
エモいBGM。
回収されていく伏線。
放送素材の完成が放送日早朝という
笑えない逸話があるほど手を抜かない作画。
全てが混然一体となって出来上がった
本作はまさに「最高のかつ丼」なのです。
インスタ映えする流行のスイーツでもなく、
食通が好む高級鮨でもない、
大衆食の極致。
迸る情熱を作品へと昇華させ、
それをやりきった制作陣には
ただ感謝しかありません。