ウェスタンガール さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
面白きことは 良きことなり。
平安遷都より1200年、京の都が焼け野原となった応仁の乱からは600年、大正に至っては100年余りである。
ベタッと広がった街並みのそこかしこには、その時代時代に重ねられた人間の営みが今も存在する。
それをさらりと拾い上げ、しれっと顔を出すタヌキと天狗たち。
そこに何の不自然さも感じないのが森見ワールドである。
本来なれば、河川敷で空を眺めて、のほほんと暮らしてゆきたきところであろうが、「阿呆の血のしからしむるところ」、「面白きことは 良きことなり」だそうである。
彼らに退屈している暇などありはしないのである。
誠に痛快なストーリーが展開して行く中で、下鴨家のタヌキ達、彼らの絆に涙すること請け合いである。
下鴨神社の参道につながる鴨川デルタを挟んで、西には我らが下鴨家の縄張りである出町枡形商店街、ちなみに、母様行きつけのプールバーは、元信用金庫の建物を改装したカフェレストラン。
東は金曜クラブのメンバーである布袋さんの京大を跨いで、大文字を従える如意ヶ嶽が鎮座する。
そこは、あの甘ったるい赤玉ポートワインをこよなく愛するポンコツ色ボケ天狗の領分であり、峰の反対側はすぐに大津の琵琶湖畔、弁天様の拉致現場ということになる。
また、少し下流の脇には、琵琶湖疏水の終点である夷川発電所が現存し、そこが宿敵、夷川家の偽電気ブラン製造所だ。
さらに下がると俗世の象徴である三条から四条の繁華街とアーケード、木屋町、先斗町が広がり、その果てには、終着点である“あの世の入り口”、六道の辻に至る松原通と交差する。辻の先は東山、平安の昔より続く送葬の地、鳥辺野という訳だ。
こうしてみると、京都の街を流れ下る鴨川は人生そのもの、全くもって良くできている。
登場人物は誰も皆魅力的である。
さすが久米田康治である。
下鴨家の四人の兄弟、両親はもちろん、敵役の夷川家の双子の息子、金閣、銀閣、嫌な奴なのに憎めない。
そして、なぜか良く出来た妹の海星、その可愛さといったら。
それを表情豊かに動かして見せたP.A.WORKS!本当に良い仕事をする会社だ。