森可成 さんの感想・評価
4.7
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
視聴者に媚びない誇り高き傑作
「ゆゆ式」について
「会話ばかりでストーリーがない」
という批判をするのは間違いです。
まるか食品に電話して
「なんでペヤングしかないんだ」
と文句をいうも同然です。
日常系の究極形態である「ゆゆ式」にとって、
「会話ばかりでストーリーがない」
はむしろ誉め言葉でしょう。
「ゆゆ式」はアイコニックな要素を
排除することで独自の輝きを生み出しているのです。
学園祭や修学旅行といった分かり易いイベントを
入れず、ゆずこ・縁・唯の日常だけにフォーカスする。
その日常の中で3人は、まったりとゆるゆるな会話を
繰り広げる訳です。
ここですごいのは、3人の会話が完全に内向きなのです。
えっ?アニメキャラが内向きの会話するのは当たり前でしょ?
と思ったあなた、本当にそうでしょうか。
メタな会話をすることを論外だとしても、
明らかに視聴者に説明してるキャラ見たことありませんか?
視聴者受けを狙っているギャグ見たことないですか?
「ゆゆ式」では本当に各キャラ同士を対象として
会話を成立させているのが話題、展開で伝わります。
ある意味では視聴者置いてけぼりなんでしょうが、
これこそがリアリティではないでしょうか。
私自身は本作の基本他愛のない、時にイカれた会話が大好きです。
また、リアリティということで言えば、
トイレの場面の多さ。そりゃ人間トイレ行きますしね。
リーサルウェポン2以上、トレインスポッティング未満、
というくらいには印象に残ります。
あと、ゆずこ・縁・唯はもちろんサブキャラクター達も
とても可愛く魅力的なのですが、
この作品では、可愛さに注力をしていません。
むしろ萌えを避けている節さえあります。
かといってわざとらしく汚れに走るわけでもない。
とにかく大事なのは、3人の会話とその関係性。
そこにはブレがない。
可愛いと思うかどうかは視聴者に任せますわ、
とスタッフが腕組みしてニヒルに笑う姿が目に浮かびます。
と、いうことで
この一見ほのぼのした本作には、
これほどまでの気概が含まれているのです。
まあ、視聴者に受け入れ易い点があるとすれば、
多くの方が美点にあげると思われる音楽の素晴らしさでしょうか。
OP,ED,BGMどれもが素晴らしい。
特にOPですが、是非フルバージョンを聞いて頂きたいです。
サスペンデッドシンバルから始まり、いくつかの
転調を効果的に入れ、大サビでの転調まで盛り上げていく
「せーのっ!」は、爽やかな曲調、歌詞も相まって
2010年代アニメ曲の中でも屈指の名曲だと思います。
この「ゆゆ式」を面白いと思わない人が多いことは、
不思議に思いませんし、不満も感じません。
合う、合わない、は確実にある作品だと思います。
私自身面白いか、と聞かれた時に、
「普通。だけど、とにかく面白いよ。」
と錯乱気味に答えてしまった作品ですから。