森可成 さんの感想・評価
4.8
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 4.5
キャラ : 5.0
状態:観終わった
私にとって「ばらかもん」とは・・・
私が勤めている会社では新入社員が色々な部署を
三か月かけて周っていく、通称ドサ周りという制度があります。
当然私のいる部署にも20代前半の若人達が来まして、
直接面倒を見ることはないにせよ、色々会話をする訳ですよ。
あんまりプライベートな内容は何だし、
仕事の話も退屈だろうと思うので、
だいたい音楽か映画、アニメの話をするんですが、
そこで聞かれたのが。
「お薦めのアニメってなんですか?」
だったわけです。
いや、大した質問じゃないはずなんですけど、
何故か私は非常に悩んでしまったんですよ。
私が「お薦め、お薦め、うーん・・・」
と唸っているのを見兼ねてか。
「一番好きとか、感動したとか、面白かったとか
でいいのがあったら教えて欲しいんですけど」
と加えてくれました。
ですがここで私は更に悩むことになったのです。
それぞれ一番を挙げるとしたら、
好きは「けいおん!」
感動だったら「宇宙よりも遠い場所」
面白かったのは「キルラキル」
笑ったのは「日常」
可愛いのは「ゆゆ式」
すごいと思うのは「化物語」
男なら「スクライド」
このあたりは、そんなに悩むことはないんです。
でも、この辺の作品が、そのままお薦めか、
と言われるとそうでもない気がしました。
なぜかと言うと、
「けいおん!」に顕著なように
バイアスや思い入れ補正が強く影響しているからです。
そういった作品を一番に勧めるのは、
些か咎めを感じてしまうのです。
となると・・・
「お薦めは「ばらかもん」だな。」
と私は答えていました。
そんな「ばらかもん」。
有名な書道家の二世である半田清舟が五島列島で
謹慎することになって、地元の人たちと交流しながら
心を浄化されていくお話。
そして観ている人間も同じく浄化されます。
爆笑するシーンはない、号泣するシーンもない。
でもニヤっとさせられ、ちょっと目頭が熱くなる。
その辺りのバランス感覚がよい。
そして、只々なるが可愛い。
五島列島だけあって、登場人物は方言バリバリ、
プライベート無視でお節介を焼いてくる距離感の無さ、
温かい田舎の生活を垣間見ている気にさせる癒し効果。
そして、只々なるが可愛い。
何か劇的な出来事が起こるわけでも、
説教くさいセリフが出てくるわけでもない。
人間はちょっとしたことの積み重ねでも
変化していくものだという当たり前のことを
ちゃんと描いている。
そして、只々なるが可愛い。
刺激が強いアニメしか評価できない
人が相手でもなければ、
万人に薦められる万能薬のような作品です。
その後、総務部長に
「新入社員達「ばらかもん」観たらしいぞ。
俺に聞かれたら「攻殻機動隊」薦めたんだがな。」
と言われました。
新入社員にそんなボスキャラいきなり薦めちゃダメですよ。
こんなご時世ですが、わが社は平和なようです。