きつねりす さんの感想・評価
4.6
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
テーマ良し、絵良し、曲良し、ストーリー良し。「泣きアニメ」の究極系
リアルタイムで見ていなかったので、「見るのであれば何かをきっかけに一気に!」と言う気持ちでいずれ見ようと構えていた作品。そんな矢先、映画館のリバイバル上映でこの作品の劇場版が掛かっていると知り、一気見を決意。(本当はBSの再放送でまったり一週間ずつ追っていくつもりで中盤まで見ていたものの、8話くらいからは映画を見るために前倒しで視聴)
ざっくり言うと、オムニバス形式で様々な人から人への思いが綴られるという一話完結型のサブストーリーがあり、その経験を経ながら主人公・ヴァイオレットが「愛してる」という言葉の持つ意味に気付いていくという本筋を13話の中で綺麗に回収した名作・・・という感じかと。
一話一話が粒揃いで、涙を伴うものもありながら、それらの話の中心にはやはりヴァイオレットという存在があり、物語が進むにつれ感情移入していった結果、「最終回が感動のピーク」という絵に描いたような一視聴者になってしまうという運びになりました。
{netabare}「感情を持たないモノ」として扱われていた少女が「人の思いを汲み取り繋ぐ存在」へ、「人を殺すことしかできない」はずが「もう誰も死なせたくない」という決意へ、「命令でしか動けない人形」が「自分のために生きる」という意志を持つに至るまで・・・といったように、人々が抱える「本当に伝えたい思い」に触れることによって、ひとりの人間として生まれ変わっていく様を美しく描いた、まさに神アニメと呼ぶに値する作品だと思います。(単発でいうと、5話のお姫様と王子様の話が素敵で素晴らしかった){/netabare}
時代背景としても、近代文明が花開き始めながらも色濃く中世ヨーロッパの雰囲気も残すという絶妙な時期を切り取り、ただでさえ魅力満点の画面の中を、それに負けず劣らず美麗なキャラクターたちが動くというところに、アニメを通り越して一種の芸術の域まで達しているような完成度の高さを感じました。他の京アニ作品で言うと「境界の彼方」にも見られるような人の動かし方(特に戦闘シーン)の丁寧さも凄いなーと思いましたが、物語の肝とも言える「涙を流す」という仕草の各キャラクター毎の描き分けが見ていて特に見事だと思いました。
取り扱うテーマとしても現在、昔ほど必要とされなくなった手紙というものの持つ役割に焦点を当てることで、その存在価値を改めて再発見させた作品としても功績は大きいのでは、と思います。
現時点で京都アニメーション大賞の唯一の大賞受賞作と言うこともあり、京アニの総力を結して作られたであろうこの作品。やはりその栄冠に恥じないクオリティで見終わった今、とても満足しました。劇場版も楽しみです。