退会済のユーザー さんの感想・評価
4.3
物語 : 5.0
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 3.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
イカれた人外キャラを心おきなくブッ飛ばすダークファンタジー奇跡の傑作による父性のファンタズム
面白いアニメを教えてと言われたらもう脳死で勧めるほど抜群の完成度を誇る本作。少々過激な表現も含むが小学生でも敵の首がバンバン飛ぶようなアニメを嬉々として楽しむ時代なので問題ない。まどマギのように萌え絵で敬遠されることもなし。
これは現実でも近未来でもないファンタジー世界のお話。禁忌とはいえ子供のやらかしに対して刑罰どころではない容赦ない罪の形が主人公とその弟に降りかかる。弟は身体まるごと喪失、脳みそすら無く意識のみを鎧に固定するという攻殻機動隊もビックリの義体設定が出てきますがファンタジーなので問題なし。これは失ったのものを取り戻す為の兄弟2人の旅物語。
義手義足について技術が発達した世界情勢の背景や高機能ゆえの運用の難度の高さなどのさり気ないリアリティがいいですね。軍事利用で急速に進歩した身体機能拡張技術という世界観で一般人が気安く利用するものでもなく、戦争孤児が食い扶持確保の技能獲得の為に自らの腕を切り落とすなどするわけでもなく、あくまで主人公が失ったものを強調する為のものに留めているのがいいです。鋼という名を冠しておきながらもメインモチーフは錬金術の1点に絞る。そして人が生み出したとはいえあくまで敵はバケモノというスタンス。どこからか未知の敵と設定をもってきて1から説明を色々されるよりも、世界観だけ取り替えて本当に恐ろしい敵はニンゲンですというのが人気な現在、若者にはこれも古臭く感じるのでしょうか。鬼滅も鬼は元人間というのをやたらと強調してましたし。人外は人間臭くしたいのに人間は記号で構わないという作品が多いのも需要なのですかね。
1クールでさえ前半退屈で後半バタつく作品が多い中、この話数での安定した面白さは現在の制作環境では実現不可能なのでしょうか。迫力あるバトルシーンや美麗な背景美術、魅力的なキャラクター、カッコいいメカ、緻密な世界設定など、パーツを見ればこの作品がなんでもかんでもぶっちぎりで優れているわけでは勿論ありません。この作品の特筆すべきは構成。伏線とは終盤急いで回収するものではないと言う事がこの作品を見たら誰でもわかります。誰でもってのがポイント。この点においてはこの作品に並ぶ作品を探すのは困難でしょう。奇跡的とも言える完成度の高さゆえのわかり易さが本作の最大の魅力です。ファンタジーという説明が必要な空想世界の物語を見る側を納得させて楽しませてくれます。見ててイライラしないってのはもの凄く重要だと思えるはずです。2周しなくても面白い物語を見たいなら是非。「わかり易い」と「底が浅い」はまったく違うモノだということがわかると思います。