「鬼滅の刃(TVアニメ動画)」

総合得点
94.8
感想・評価
1681
棚に入れた
7026
ランキング
5
★★★★☆ 3.9 (1681)
物語
3.7
作画
4.2
声優
3.9
音楽
3.9
キャラ
3.8

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退会済のユーザー さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7
物語 : 3.0 作画 : 5.0 声優 : 3.5 音楽 : 3.5 キャラ : 3.5 状態:途中で断念した

鬼滅好きの子供を持つ者がまあまあ長文で絶賛を試みる実験的レビューと問題点についての煽り気味な好意的解釈と蛇足少々と部屋とワイシャツと私

大人気マンガのアニメ化ではなく、アニメで人気に火がついた本作。社会現象とまで言われる作品は必然的に熱烈な信者と強烈なアンチを生産し、鬼滅最高○○はクソ、○○最高鬼滅はクソとお互いにブーメランを投げ合う不毛な戦線が各地で自然発生するさまに、幾度となく繰り広げられてきた人類の数々の歴史の1ページ、まさにその誕生の瞬間に立ち会えていることに私は心は震え胸が踊り喜びを隠せない。私個人としてはどちらにも立つことはない傍観者の立場を貫いてきたのではあったが、そうも言ってはいられない事件が起きた。

娘らにコミック全巻買わされたわけだが。
鬼滅面白いとコミックスとグッズに囲まれキャッキャウフフしてる様子を見て私はまだ小学生である彼女らをアンチから護る盾として生きねばならない宿命を負わされた。よしいこう。絶賛してやる。

作画は凄まじく美麗で高品質、特にアクションシーンは度肝を抜かれると言っても過言ではない。凡庸なそこらの劇場版などを遥かに凌駕する圧倒的なクオリティ。企画時にはアニメ化を熱望されるような看板作品と言えるまでの超人気作ではなかった筈だが、制作スタッフ達の自分達で時代を創ろうとする意気込みを強烈に感じられる熱量が画面からは溢れ出ている。オープニングからタイトル画面、アイキャッチに至るまで見事に隙がない。

この作品を語る上で重要なのはやはりバトルシーン
である。敵の使う理不尽な術に対し、こちらは剣撃で立ち向かうのみ。攻撃を加えるには相手の射程内に自ら飛び込むしかなく、未知との恐怖に向き合い覚悟を決めて踏み込んでいく彼らの勇気と覚悟を詳細に描写していくアクションシーンに釘付けになる。長距離射程の技や飛び道具を持たない彼らが攻撃を受け血を流し痛みに耐えながら敵との距離を詰めていくさまは、まさに手に汗握るといった感想が相応しい。

絶望的な力量差の敵と対峙する緊張感。最初の一歩を踏み出すまでに繰り広げられる迷いや葛藤。それでもやるしかないと自分を追い込み腹を括る決断の表情と息づかい。力強く地面を踏み込み懐に飛び込んでいくスピード感。人外であるがゆえの強大なパワーを持つ敵の攻撃の重量感。倒されて地に伏した際に眼前に広がる地面の硬さ。純粋に目の前の人間を殺すことだけを考える敵への恐怖。絵がキレイなだけではない。まさに命のやり取りがそこにある。簡単には切れない敵の首に打ち込む刀身の描写にも執念とも言える力強さを感じる。

どこぞのまるで2D格ゲーの様なただスピード早くてガードキャンセルやモーションキャンセル繰り返してコマンド技、ゲージ使用技をバカみたいに連打するようなバトルシーンとはもう雲泥の差なのである。異世界モノの様に簡単に回復出来るわけもなくストーリー上勝つ事がわかっていたとしてもなお死への恐怖をヒリヒリと感じる臨場感が凄まじい。

登場キャラクターもまた魅力的である。主人公の真っ直ぐさは見ていて非常に気持ちよく、娘が紹介してきても秒で容認出来る抜群の好感度。救いの無い世界観の中で仲間2人のコミカルな、しかしけして下品ではないギャグシーンでは悲惨な状況下においても折れない彼らの強さが垣間見える。味方組織のキャラ達は美しく品のある愛すべき日本語を語り、彼らとの会話シーンだけで厳しくも規律正しい組織の在り方や結束の強さがうかがえる。立ちふさがる敵の背景も丁寧に描かれており、同情は出来るがそれでも許される事ではない、と葛藤からの決断までの描写もさらに作品に深みを加える。

アニメとしての評価であれば特筆すべきはやはり技の表現であろう。激しい修行の末に会得した様々な呼吸法による各々の攻撃の描写には目を見張るものがある。特に露出の多い主人公の繰り出す技の数々は彼の淀みない清らかさと力強さを目に見える形で美麗に描写しており、彼の生き様を表現しているかのよう。攻撃手段に制限がない人外キャラは様々な方法を用いて主人公達を苦しめるが、主人公達は設定上使用武器が刀剣に限定されている。その縛りがあってなお剣士達は各自の個性を表す呼吸法による実に多彩な技を使いこなしていく。個人的にお気に入りなのは雷の技で普段のヘラヘラした態度からは想像もつかないカッコ良さ。独特の構えから呼吸を整えたうち、一瞬のうちに懐に飛び込み高速で繰り出される一閃はまさに一撃必殺。これぞ必殺技といえる爽快感はアニメならではの体験。アニメキャラクターの攻撃手段を美しいと言えるまでに昇華させた技能と手腕は手放しで称賛に値する。

原作支持者を羨ましく思うほど非の打ち所のないと言えるアニメ化である。高評価なのも納得の丁寧な作り。原作はまだまだ話は続くので次期ではまた評価が変わっていくのではないかと期待している。



この作品がヒットした要素として、ヒロインを妹にしたことで恋愛要素の排除によるターゲット層の拡大や、それに伴い普遍的なテーマである家族愛を描いたこと、友情努力勝利のジャンプのフォーマットを女性ならではの感性で表現したこと等の分析もあるが、個人的には妹が人を襲わない様、口を塞いで喋らせないようにした設定こそが最大の要因だと思っている。常に主人公と行動を共にする彼女が会話可能なだけで画面の雰囲気がまるで違うものになっていたであろう事は想像に難くない。メインヒロインを恋愛対象から外すだけに留まらずマスコットキャラクター化することで、妹を守る為に1人奮闘する主人公という構図が完成する。それだけではない。ストーリー構成上チームプレイを排除することで敵との遭遇による絶体絶命のピンチを主人公は単独で迎えることになる。窮地からの突破口を見つける為に思考を巡らせるには呼吸を整えて冷静になる必要がある。そして呼吸が整わなければ状況を打開する為の技を出すことが出来ない。他の作品と違い技の発動の際にマジックポイントや弾薬、エネルギーなどの消費材は不要ではあるが無尽蔵に連発することは出来ない。この作品において孤軍奮闘の中での熟思黙想の描写はまだ剣士としては未熟な主人公の技の発動コストの表現なのである。その為にも妹を主人公の思考に介入させるわけにはいかなかった。日常の中でもある筈だ。持ち込み禁止の物を先生に見つかった時。仕事中にクレーマーに捕まった時。街でチンピラに絡まれた時。回避不能な状況の中で頭をフル回転させ、落ち着け、考えろ、と必死に自分に言い聞かせる筈だ。これを心の声がベラベラと五月蝿いと感じる方は一般的に困難とされる状況をそつなく突破出来るエリートか未だ窮地に立たされたことのない世間知らずのどちらかであろう。



いつの時代においても自分の思春期に親しんだ作品こそが自分を造るもの。パクリだ既視感だと言うのなら我々は手塚治虫作品しか認められない世界に生きることになる。いつの時代も子供達が熱望するのは昔の名作や伝説の傑作でもない自分達の世代の代表作だ。その誕生の現場に歓喜している姿を羨む前に我々にもそういう瞬間があったことを思い出して欲しい。そして外部からの視線はいつだって冷やかなものなのだ。

今の人気は同じ雑誌の長寿看板作品と同じく「売れているモノは売れているからこそ売れている」といった好循環の中にあるわけだが、それと同時に「売れているモノは嫌い」といった層が発生するのもまた自然の摂理である。人気がある売れている世間に評価されている作品に対しての向き合い方はそのまま社会に対しての向き合い方と符号する。自分自身の社会への適応度を映す鏡となる。

想像してみよう。好きな相手、学校会社イチの美人美男子に「鬼滅面白いよね。今度一緒に見よ?」などと言われたら。「だが断る」と一蹴出来る勇者には何も言うことはない、それも人生。だが大抵の場合そうではないはずだ。上ずった座りの悪い返答で話を合わせたところでバレるのは時間の問題である。「コイツは人が好きなものの話をしているのに適当に調子を合わせる愚劣で程度の低い最低クソ野郎だ」とリカバリ不能なレッテルを貼られ評判は地に落ちるのは確定的に明らかである。他にも尊敬する近づきたい先輩だったら?取り入りたい上司の子供だったら?キライな物はキライで構わない。だが私が尊敬する先生であればこう言うだろう。

「好きになれと言ってるんじゃない、上手くやれと言ってるんだ」

キライと言う心情も理解出来るが流石にこの作品の作画に低評価をつけている方々は冷静になった方がいい。信者に付け入る隙を与えるだけである。無駄に高品質なこの作品を面白いと言ってる彼らに他の作品を勧めることは容易ではないどころか高難度とすら言えるであろう。「絵柄さえ慣れれば大丈夫」とか「ワンクール耐えれば後半は面白い」などこちらの常識は通用しない。アニメ以外の様々な表現に触れている彼らにとっては我慢を強いる時点で駄作なのだ。だがこのサイトのエリート諸君であれば彼らの未知への扉をこじ開けるための知識と教養を持ち合わせていると私は信じている。彼らのアニメに対する興味を拡張することは諸君らの交友関係をも拡張し、一石二鳥でWin-Winで完全勝利なのである。


だから娘に見せるアニメ教えてってば。たのむよ。

投稿 : 2020/05/18
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