tag さんの感想・評価
4.7
物語 : 5.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
オリジナリティあふれる傑作
ロボット物です。設定の字面だけみれば普通の設定と言えるでしょう。しかし、脚本、キャラ設定、シナリオライティング、音楽、何れも非常に高いレベルでバランスした傑作です。
絵コンテ、演出、3DCG、撮影、編集、音響監督、原作、脚本、監督、ほぼ全てスタジオリッカの吉浦康裕さんが直接手掛けています。オリジナル作品です。オリジナル作品で、オムニバス方式の複数のエピソードと重ねながら物語の主題を終盤に向かって構成してゆく、しかも、観客をエンタテイメントとして引き付けながら。ほんと大した手腕です。演出、カット割りも、非常にしっかりしていて観客を引き付けて止まない。
出演するロボットたちのシーンを分けた演技も切なく、考えさせるものです。ロボットは果たしてプログラミングで人格(本当の意味のAI)を持つのか?持った場合、社会は、人と人の、人とロボット、更にはロボットとロボットの関係はどうなるかのか?とても興味深い論点を次々と繰り出し、それを複数のストーリーとして重ね、エンタテイメントとして展開してゆく。決して冗長ではなく、どちらかと言うとそぎ落とした演出、カット割りで。はてさて、吉浦康裕は、この作品を作るのにどれだけの時間を費やしたのだろうか?
ヒューマノイド型ロボット物の生みの親であるアイザック・アシモフが提示した有名かつ伝説的とも言える設定「ロボット三原則」があります。これを使ってSFフォーマットでの推理小説を初めて書いたのもアシモフ。イブの時間でもこれを使った物語があります。推理小説というより、心のわだかまりを対象にしたハートウォーミングな物語が終わり近くにあります。これも白眉と言ってよいでしょう。
「心のわだかまり」とあるように、この作品をつらくぬ主題は「断絶」「すれ違い」「誤解」「でも隠しようがないお互いを理解したいという想い」、そしてラストに見える「光明、救い、願い」。非常に普遍的な主題を真正面から取り扱い、観た人に、”想い”を残す。そんな作品です。
そして、映画版の主題歌がKalafinaの「I have a dream」です。キング牧師が黒人解放(=断絶からの救い)を願った有名な演説中のメッセージが題名の楽曲です。なんとも、粋な演出です。
座布団100枚!あしからず。