「虚構推理(TVアニメ動画)」

総合得点
75.6
感想・評価
577
棚に入れた
2347
ランキング
794
★★★★☆ 3.4 (577)
物語
3.3
作画
3.5
声優
3.5
音楽
3.3
キャラ
3.5

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ネタバレ

Progress さんの感想・評価

★★★★★ 4.1
物語 : 4.0 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

虚構推理 レビュー

INTRODUCTION(公式サイトより引用)
“怪異”たちの知恵の神となり、
日々“怪異”たちから寄せられるトラブルを解決している少女・岩永琴子が
一目惚れした相手・桜川九郎は、“怪異”にさえ恐れられる男だった!?

そんな普通ではない2人が、
“怪異”たちの引き起こすミステリアスな事件に立ち向かう
[恋愛×伝奇×ミステリ]!!

2人に振りかかる奇想天外な事件と、その恋の行方は――!?
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さて、私はこの作品、視聴中はあまり事件の謎を推理・考察するなどはせず、物語の展開を楽しむ形で見ていました。
登場人物は大学生から社会人程度がメインキャラクターになっておりますが、ヒロインである岩永琴子の容姿は序盤に描かれた高校生時代とあまり変わらず、低身長の可愛らしい印象です。かつ、EDで描かれるような、少し大人びた印象も感じられるようになっています。登場人物全体に言えるのは、目力が強く感じられますね。

この作品は「恋愛×伝記×ミステリ」というキャッチフレーズ通り、3つの要素が入っています。
物語が進むにつれて恋愛がどうなっていくか、それほど注意してみるような作品ではないですが、琴子が九郎にアプローチする展開や、九郎の元カノの登場で、琴子がやきもきとしてあれこれ画策する展開、ラブコメディ的な展開で関係が平行線のように見せつつも、終盤の展開には恋愛関係の発展という甘い盛り上がりも作っていました。

伝記という要素は、物語の輪の中に物の怪という存在を入れていたことですね。時には、物の怪が攻略する対象に、またある時には登場人物の設定の中に物の怪との関連性を組み込み、さらにその物の怪の性質を物語の展開に結び付けていました。
しかし正直、大蛇にしろ鋼人にしろ、九郎と物の怪の関係性にしろ、舞台装置的に見せたいものをみせるために作られた存在にすぎないようにも感じましたね。
大蛇という物の怪は何かという本質の追求ではなく、人間が持つ物の怪への意識を物語をつくる為に利用した形のように思えました。

さて、本作のミステリーという要素は、各章が終わっても事件の謎が全てつまびらかにならないという特殊な構造になっています。その根本的な理由は虚構推理というタイトルに関わっていきます。
ヒロイン、岩永琴子は、虚構を編む、つまり作られた物語を組み立て、いかにも筋が通っているような、聞いている人が納得するような物語を作り上げます。
事件の謎を解き明かすという題目を掲げて、実は真実は重要ではなく虚構で相手を納得させることが、岩永琴子の目的となっています。
中盤から終盤にかけての鋼人編では、怪を倒すという目的の為に、方法として、虚構を作り上げる物語になっています。
この虚構推理を用いて作り上げる本作品の面白さはどこでしょう。
個人的には大蛇編は本作品の「相手を納得させる」というコンセプトを説明することにあり、中々面白さが伝わりづらかったと感じます。仮説において、矛盾を抱えつつも、心理的な情に訴えかけるオーバーな物語を琴子が作り上げるという展開については、中々インパクトがあり良かったと思います。
鋼人編についても、人の意識を変える展開という意味で面白かったです。ネットのオカルトサイトの掲示板という特殊な媒体で議論する人と、アニメーションで図解を伴いながら喋っている琴子という視聴者の状況が違うため、視聴者が感じた矛盾点と掲示板の住民の指摘する矛盾点は必ずしも一致しないため、掲示板の住民と同じように琴子の話を聞いて反論するという楽しみ方はできませんでしたね。
掲示板の議論の中にある形勢というものが変わっていく点に面白さがあったなと思います。その形勢を分かりやすくするために鋼人という怪が舞台装置として使われていたようにも感じます。
また、鋼人が現れた理由を考えるという展開で、今まで死因を考えるときは人の世界の常識的な考えを用いていたのにもかかわらず、鋼人が化けて出る理由を人の理から外れた世界で虚構推理を展開し、それが受け入れられる特殊な状況、作品世界の聴衆が如何に理ではなく物語を求めている心理への変化が感じられて興味深かったですね。
さて、ミステリというには確かに真実は解き明かしてはおらず、大蛇編も鋼人編も、真犯人を突き止めるという爽快感のある目的ではなく、人を推理で納得させるのを見るという、意識の変化、議論の形勢の変化を面白さとして提供する、一種の議論モノだったと思います。

さていかがだったでしょうか、「虚構推理」。
蟲師のような物の怪の神秘性や恐ろしさを追求した物語ではなく、物の怪好きには物足りないかもしれません。人物設定に物の怪との関連性を含めて、作品の世界観と人物像をリンクさせることで、人物の設定の面白さとしては良かった点もあったと思います。また、琴子に付き従う物の怪は琴子に対しては親しく接し、物の怪という要素は明るい要素も多分に含んでいるように感じました。
ラブコメディとしては、作品全体で一つ関係の進展が起きたとみると、かしましいコメディよりの恋愛作品だったと感じますね。
ミステリという点において、真実は明らかにならなかったり、トリックに対する矛盾があるのは承知の物語になっています。人を納得させるという目的で、謎に対して解決させたような気分にするという、推理の議論の形勢を魅せる、中々特殊な面白さをもった作品でした。

投稿 : 2020/05/21
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サンキュー:

33

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