Progress さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
恋する小惑星 レビュー
イントロダクション(公式サイトより引用)
幼いころ、キャンプ場で出会った男の子と
“小惑星を見つける”という約束をした木ノ幡みら。
高校では天文部へ入部しようとしたが、今年から「天文部」と「地質研究会」が合併して「地学部」になっていた……!?
地学系女子(ジオジョ)たちと一緒に、いろんなキラキラを探しに行きませんか?
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さて、天文や地質の部活動を扱ったこの作品。
キャラクターは目の光彩がカラフルで透明感があり、丸みがあって非常に見やすいデザインでした。
絵作りの印象としては、やはり屋外での部活動において、自然を背景としたスッキリとした絵作りが印象的でした。
第一印象としては、「恋する」という言葉から連想される恋愛物、第一話で登場する人物が全て女学生であるという事から、百合物なのかな?とちょっと身構えました。
しかし、話数を重ねていくうちに恋愛、という要素はメインではないことが分かってきます。
メインのテーマは、部活動を通して将来を考える事を強く打ち出しているように感じました。
1話から3話は、将来の夢という大きな目標を打ち出しながらも、部活に入部した1年生から見た視点、夢に対する現実的なアプローチ方法が見えない状態、何もわからない状態で楽しく部活をするという状態を提示しています。そこから楽しさを維持しつつも、地学部の活動、およびその学問を3年生が教えてはっきりとさせていくようなストーリーでした。
その後4話~6話が、入部当時3年の先輩方の夢や進路という物を扱っています。ここで、何になりたいか、何がしたいかが決まっていない人物として桜井美景(以下、桜)、そして将来の夢は決まっている森野 真理(以下、モンロー)を描き、どちらの感情もフォローして、幅広く視聴者をフォローし、対称的な構図を作りたかったように見えました。
桜の方は好きな事はありその部活を楽しんでいるけれども、進路とするとなると諦めてしまう弱さがありました。
モンローは進路とする目標があり強く見えるけれども、実はその目標に向かって活動できる場所(部活動)で、真面目ではあったけれども楽しんでいたかという疑問にぶつかっています。
上記の話で言えば、私はどちらかといえば桜のようなタイプですのでそっちはなんとなくわかります。なのでモンローの心理の方が気がかりになるのですが、モンローの悩みは、自己実現の中で真面目になるあまり、好きを失ってしまう、または置いてきてしまったのではないかという心配だと思います。
そういった3年生の悩みというのを、まだ経験していない人間にも知ってほしいというような物語にも見えたし、経験したであろう人たちに郷愁を与えるような物語でもあったと思います。
そして物語は1年生と2年生の話に再び戻ってきます。2年生の部を背負っていくという体験を、2年生の猪瀬舞(以下、猪)にとっては唐突に3年生が引退するという事態に落とすことによって、若干オーバー気味にテーマを落とし込んでいます。
終盤は一年生から二年生に上がるみらとあおの成長と目標への熱意をテーマとして感じました。新しく入ってきた新一年生への、先輩から教えてもらったことを受け継いでいく、成長の面。1年生に目を掛けつつも、自分たちの夢に対するアプローチも「きら星チャレンジ」という天文学のプログラムに参加。1年生の時はわからなかった小惑星へのアプローチ方法を確実に掴んでいき、そしてそれを実行する熱意。
下級生の手本になるような成長や、学校外に自発的に飛び出して活動を行える熱意というのは、私からするとそうしたかった、そうありたかったという理想として感じるのと同時に、作り手側の、こんな風に活動していいんだよという、夢を見るみら達のような学生へのメッセージ性を感じて、その人たちに見てほしいなあと感じましたね。
さて、いかがだったでしょうか。「恋する小惑星」。
人間関係の軋みをできるだけ薄くしつつ、部活動の中における各学年の関係性と、各学年の悩みや成長を幅広く扱った、透明感のある作品だと感じました。
部活動を真面目にしつつ、悩みを抱えつつ、失敗もありつつ物語は進んでいきますが、夢に対して、こうあってほしい、こうなってほしい、進んでみよう、という、前向きに夢に向かうことを願っているようなメッセージを感じる作品でした。