退会済のユーザー さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
消えたいと願った全ての人へ
石ころになりたい。
よくわかるよ。
「だって、レキは一度も助けてって言わなかったもの。
ずっと。待ってただけ。」
これに気付けたらホントにキツイけどもう少し。
>うんと優しくしてあげよう。
>ずっと一緒にいてあげよう。
ひとは与えられたものしか与えられない。
でもレキにはまだ足りなかった。
ラッカの呼びかけにギリギリ捻りだした言葉。
錆びついた想いでは自身の体すら動かせない。
気づくことさえ出来れば。
0から1に出来れば。
聞く耳さえ持てれば。
ヒントはすぐそばに転がってるのかも。
あとは自分で。一人で。ひっそりと。
個人に価値なんてない。
才能なんて誤差程度。
考えることは繋がりかた。
誰のために。どうありたいか。
刺さる人にはブッ刺さる作品。
マイベストランキングに悠々と入賞し、
今まで見逃していた事を恥じては悔やみ、
誰かに勧めたい衝動を抑えられない程。
画面は暗くキャラデザも地味。アツい友情も恋愛も無し。退屈に思う人もいるだろう。途中で切る人もいるかもしれない。そのぐらい穏やかで優しい時間が続く。人を選ぶというのは間違いない。
空から落ちる夢を見た少女は、
見知らぬ部屋で目を覚ます。
そこは「灰羽」達が暮らす部屋。
少女に声をかける灰羽の名はレキ。
自分の名前が思い出せない少女は、
夢からラッカと名付けられる。
右も左もわからない中でレキ達はとても優しく、
人間と共存する街で平穏な日々が過ぎてゆく。
そんなある日、仲間の一人が消息を断つ。
激しく動揺し困惑するラッカに対して、
レキ達の反応は以外にも冷静なものだった。
メタファーの嵐。
特にカラスがやたらと意味有りげに出てくる。
時にはエピソードまるごとだったり。
アレはコレを表しててコレはアレに対応してとか
疑いだすとキリがないレベル。
対比もやたらとある。
壁の中と外。
飛べない灰羽と飛べるカラス。
生きてるカラスと死んだカラス。
灰色の翼と黒い翼。
灰羽と人間。
灰羽達の住居。
大人と子供。
名付けのルール。
意味があるのか無いのか完全にこちらの器量。
舞台の世界設定もほぼ説明無し。
レキ達と同じ目線で世界を見る。
「それは誰にもわからない」
「よく知らないけどそういうことになっている」
ラッカの質問にもこのありさまである。
作者の言いたい名言を唐突にベラベラと話し出す昨今のラノベアニメに比べて不親切極まりない。灰羽の灰色の意味は白黒ハッキリさせない、ということかもしれない。
一番好きなのは会話がものすごく優しいところ。お互いに気遣い思いやる言葉は美しく、主要人物の優しさがこれでもかと表現される。人への優しい接し方のモデルケースと言えるほど。みんながこれほどまで優しくなれるのかは個人的には納得のいく設定もある。もちろん劇中での言及はないので不自然と思うのも自由だが、単純に聞いていて気持ちがいいし、上品になった気分にさえなれる。音楽もかなり素晴らしい。
もしあなたやあなたの大事なひとが
このレビュータイトルのようなとき
思い出して欲しい、そんな作品です。