oneandonly さんの感想・評価
3.8
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
久々に原作を購入したくなった作品
世界観:5
ストーリー:7
リアリティ:6
キャラクター:7
情感:6
合計:31
<あらすじ>
玄関を開けるとJSがいた
「やくそくどおり、弟子にしてもらいにきました!」
16歳にして将棋界の最強タイトル保持者『竜王』となった九頭竜八一の
自宅に押しかけてきたのは、小学三年生の雛鶴あい。九歳
「え?、…弟子?え?」
「…おぼえてません?」
覚えてなかったが始まってしまったJSとの同居生活。
ストレートなあいの情熱に、
八一も失いかけていた熱いモノを取り戻していくのだった
1クールのアニメで面白く区切りも良いという基準で推薦されていたため視聴しました。
将棋については、小学生時代に将棋オセロクラブの部長をしていたことがあり、漫画「ハチワンダイバー」を読んだり、アニメ「3月のライオン」を見たり、たまにYoutubeで対局動画を見たりしていて、昨年(2019年)の7月頃からは改めて勉強していたり、私にとって身近に感じられる題材です。
アニメ内でもピラミッドの図が出てきていましたが、将棋の世界は圧倒的に実力による階層構造になっており、2級(段)以上違えば逆転がかなり難しくなります(私はアマチュア三段以上にはほぼ勝てません)。
奨励会の三段リーグは有名ですが、奨励会の6級がアマ四段相当と言われているので、プロはアマ級位者からすると雲の上の存在であることがまさに実感されるところです。
本作の主人公の九頭竜八一はプロの中でも最上位の1人に位置付けられる竜王のタイトル保持者であり、また、その弟子になる小学生の雛鶴あい(作中にアマ三段になったとのシーンがあるが、詰将棋の力量から推測するにもっと上にいく器である)らも相当な実力者です。
余談ですが、アマ初段になるには、自分が使う戦法の定跡(相手に応じた攻め方、受け方)をある程度は暗記して序盤力を鍛え、手筋や捌きを覚え、形勢判断に応じた指し方ができるよう中盤力を鍛え、5手詰程度の詰将棋や必至問題を毎日解いて全体的な読みの力と終盤力を磨く必要があります。もちろん、素質・才能によって差はありますが、一般的にはそのような努力を少なくとも1年以上はしないとなれないと言われています。
さて。そんな私が見た本作。当初は{netabare}小学生のあいが主人公の部屋に入っていたり(鍵閉めてないとか、開いていたら入ってしまうとか)、裸の小学生を押し倒している現場を姉弟子に見られるとか、ロリ押しを感じなかったわけではありませんが、主人公の八一はロリ王と呼ばれながらも幼女をそういう意味で好んではおらず、事故的なトラブルをコメディにしているだけなのでそれほど抵抗はありませんでした。
(著者も、ロリはカレー粉のスパイスと言っています)
また、ハーレム感はあるので、そこが苦手な方は駄目かもしれませんが、八一は恋愛より将棋や弟子のことを考えているので私は問題ありませんでした。{/netabare}
配点基準に沿って評価していきますと、世界観は現実世界のため7点上限のところ、音楽、作画面は満点と言えないため5点としました。OPは明るく、熱を感じられる作画が良かったですね。
ストーリーはロリコメディの軽さはありつつ、{netabare}7話では脇役だった桂香さんでドラマを描き(最後の父親との会話、感動しました)、10話では姉弟子の銀子をメインヒロイン級に引き上げるシーンがあり(それでも不憫だ)、竜王戦で失冠の危機に瀕し、ロリ弟子に当たってしまう、八一をリアルに描き、また最終回で熱い将棋を見せつけるという良い仕上がり。後述しますが、原作勢にしてみれば割愛が多く不満のようですが、アニメが初めてだった自分には普通に楽しめました(第四局の連続王手の千日手と打ち歩詰めの反則が重なるとか、よく考えついたものです)。残りの3局が割愛されたのも私は全く問題ない構成と思いました。むしろ、年齢制限の話やタイトル戦での崖っぷちからの逆転劇は悪く言えばよくある話であって独自色をもっと出せればと思ったのと、{/netabare}若干駆け足感はあったのが気になって7点としました。
リアリティはロリコメディで若干評価を下げました(対局中の発言やインタビューでの呼びかけ等は将棋作品を盛り上げるための演出として不問)。全体的によく調べて作られており、キャラの棋力配置も物語を生むための設定の範囲なので6点。局面が度々見えて実際プロレベルの棋譜になっているのかと思わせましたが、実際のプロ棋戦や小学生名人戦の対局などが参考にされていました。
キャラクターは{netabare}中盤以降、銀子をヒロインとして魅力的に描けていたこと、{/netabare}脇役などにも光を当て、それぞれの思いが表現されていたことを評価して7点としました。あと、JS研のシャルちゃんが可愛い(声優が素晴らしい)。主人公の八一も、変な癖がなくて共感しやすかったです。
情感面は{netabare}7話と10~12話が良く、3話の研修会試験も印象的でした。それでも、泣けた~!というところまでは至らなかったので{/netabare}6点です。おそらく進行速度の問題なのかなと思って、続きも少々気になったので原作情報などを調べ始めたのですがそこで色々なことがわかってきました。
私はライトノベルに疎いのですが、本作の原作は「このライトノベルがすごい!」(宝島社)で2017年、2018年に1位を獲得、2019年、2020年で2位を獲得しており、2010年代の総合ランキングでSAO、とあるシリーズに次ぐ第3位につけ、殿堂入りとなっているほか、原作のAmazon評価は1巻から最新の12巻まで、4.5、4.6、4.6、4.8、4.6、4.7、4.8、3.7、4.8、4.7、4.9、4.7という高評価となっており(11巻、12巻は200件以上の評価が寄せられてこの値です)、SAOやとあるシリーズよりも上。私の評価が高いちはやふるも26巻以降は4点台前半が多くなっているところ、4点台後半を継続しているのはなかなか凄いことなのではないでしょうか。
{netabare}アニメでは散々な扱いだった銀子が報われる展開のようなので、読むしかないでしょう。
銀子は、弟弟子の八一には姉弟子として振る舞いますが、実力がモノを言う世界で、八一はプロになって竜王に昇り詰めたわけです。二人でのVSがその原動力となった自負もあったと思いますが、アニメ11話のくだりや、将棋星人のたとえがあったり、複雑な思いがあるというのは想像がつきます。八一に対する態度はそういった思いを抱えた子供らしさでもあるのです。{/netabare}
おそらく原作の出来からすると私が評価した4.0点というのは低いのかもしれませんので、本作をとりあえず視聴してみて、面白いと思ったら原作へという流れを推奨できるのではないかと思っています。
なお、現実世界では藤井聡太七段が竜王戦の決勝トーナメントを勝ち上がっており、18歳での戴冠の可能性を残しています。また、奨励会の西山朋佳女流二冠が三段リーグを挑戦中です(前回、僅差の3位で突破できませんでしたが、次点が付与され、女性初のプロ棋士への展望が僅かながら広がりました)。
さらに、将棋Youtuberのアゲアゲさんこと折田翔吾四段がプロ編入試験を合格(最終戦はタイトル挑戦中の本田圭五段相手に勝利)するなど、結構話題に事欠かず、盛り上がっているように思います。アニメはそれほど注目されなかったかもしれませんが、海外のファンも増えているようなので、ご興味があればこの世界を覗いてみてはいかがでしょうか。
(2022.8追記)
原作も読みましたが、更に下ネタ幼女ネタが多く、アニメにおいて原作の良い部分が生かし切れていない(尺の問題もあるが)ため、全体的に評価を下げています。
(参考評価:3話3.8→7話4.0→8話3.8→10~12話4.0→調整3.8)
(視聴2020.4~5、初稿2020.5.5)