かがみ さんの感想・評価
3.6
物語 : 4.0
作画 : 3.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
仲良くする必要はない、上手くやれと言っているんだ
本作の構造を支えているのは「スクールカースト(本田由紀)」という学校内序列に対する「労働なき階級闘争(波戸岡景太)」という読みもあるが、ジャンル的観点から言えば、本作に代表される「残念系」とは「日常系」と表裏の関係にあると言える。
80年代から90年代にかけて成熟モードは物語批判から物語回帰へと変遷したが、物語回帰が自明なものとなったゼロ年代以降では、異なる物語を生きる他者との関係をいかに記述するかが新たな問題として提示された。
この点、他者との関係性が生み出す「きずな」を記述するのが「日常系」であり「生きづらさ」を記述するのが「残念系」という事になるだろう。
この点、平塚の「仲良くする必要はない、上手くやれと言っているんだ」という言葉は極めて印象的である。異なる他者を敵対でも無視するわけでもなく、さらっと無難にやり過ごすという事。
デリダ=東浩紀が言うように、コミュニケーションには不可避の誤配が伴う以上、誤配を排除するよりも誤配を受け入れるコミュニケーションがより生産的である。その意味で本作は、リア充と非リアという異なる物語を生きる他者同士が「上手くやる」ひとつの理想形の記述である。
当然の事ながら現実はこんなに上手くいかない。むしろ本作が秀逸なのは現実的解へ至る過程を各キャラクターに綺麗に振り分けている点である。「上手くやる」。その為に必要なのは必要なのは空気を懐疑するアイロニーと空気を書き換えるユーモアである。端的に言えば、比企ヶ谷的キモさへ一旦は突き抜けた上で、葉山的軽さに折り返すという事である。