takato さんの感想・評価
4.2
物語 : 3.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
「世界の押井守のはじまりはじまり」
本作で攻殻のブランドは始まり、「世界の押井守」が始まったと言っても過言ではあるまい。しかし、共にそれらの本質とは微妙に違うものとして広まってしまった始まりだと言いたい。
本作の少佐は明らかに生に飽きてウンザリしている。生に対する倦怠という押井さんのテーマが全体を曇天で覆い尽くしている。こっから高尚で難解な攻殻であり、作家な押井守というイメージが広まってしまった。
しかし、原作のニュアンスはかなり違って少佐はわりと生を楽しんでいる(ノリが明るいし、レズビアンセックスも屈託なく行う)。ヤンマガに載ってたくらいだから、そこまで暗くも真剣すぎでもないのだ(難しいのは否定しないが)。
押井さんもフィルモグラフィーを振り返ってみれば、この人のヒット作ってみんな他人の(パトレイバーはちと違うが)キャラ人気がある明るいノリな作品を原作にしてるものばかりなのだ。うる星やつら、パトレイバー、攻殻、特に前の二つは全然重くない楽しい日常コメディーと言っていい作品だ。
つまり、押井さんはオリジナリティー溢れる作家タイプではなく、実は人気作品をアレンジする職人として、演出家として優れているタイプなのではないだろうか?。この辺の誤解が押井さんを幸せにも不幸にもしたと思われる。
問題は、いかに立ってるキャラを用意できるか?だと思われる。あと、盟友の脚本家の伊藤さんみたいに相性が良いバランス感覚がある人とタッグを組めるか次第かな。
改めて見ると、沖浦さんや磯さんのスーパーアニメーションの凄さが世界を驚愕させたのだろう。こんなに重量感、リアルさ、クールな描写が95年の段階で存在したんだから、むしろ今は退化してんじゃね?って懐古厨じゃないが思ってしまう。エヴァもだが、内容云々以前にビジュアルがとにかく斬新で格好良かったのが第一だろう。
ただ、TV版に比べちゃうとユーモアのない世界なのがやはり物足りないところがある。あと、よく考えるとあんまりイベントないような。