砂粒と嵐 さんの感想・評価
2.4
物語 : 1.0
作画 : 4.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 1.0
状態:観終わった
ファンの方は気分を害すかもしれませんが…
視聴が困難だった。きつい。大好きな可愛い弟の勧めだからこそあまりこき下ろすこともできず、それがまたきつかった、、。
様々な怪異を解決していく中で、吸血鬼とか「怪異」が何であるのか、戦うべきは誰なのか、そういうことが徐々に明らかになっていく…というような構成のストーリーと思っていたが違っていたらしい。怪異は添え物で本題はハーレム。
毎話毎話、序盤10分が女の子のまどろっこしい会話に割かれていて全然話が進まない。
そこの掛け合いが見たい人のためのアニメだったようだ。
だから度々ストーリー展開が謎で、論理破綻してるような印象を受けた。
添え物だから深く考えなくていいんだろうけど、「怪異」の定義がよくわからない。
ぼやっと、「なにか人智を超えた不思議な力で、人間に取り付いて悪さをする」みたいなものであることはわかるが、どういう目的とか性質があるのか、根本的にそれがなんであるのか、が謎。人の弱さにつけ込んで悪さをするので、人間の弱さが可視化されるみたいな存在なのかな?と思うフシもあったが、そういうことでもないっぽい。戦場ヶ原にしろ羽川にしろなでこにしろ、いつも弱いもの、虐げられているほう、犠牲者側、にばかり取り付くので、すごい厭だなあという印象だけは受けた。
とはいえ、言葉遊びとぐるぐる回ったようなパラドキシカルな論理ゲーム、個性的で実験的な映像効果、お洒落な音楽、そういう世界観に安易に魅せられてハマる層が一定数いるというはわかる。
実際私も、音がかっこよかったのと不思議なデザインの建築物や背景のスタイリッシュさには興味を惹かれた。あくまでも享楽的な意味でだけど。
それでも何がきついのかってたぶん、キャラクターの描写だと思う。
まずひとつには、阿良々木暦が好かない。
初対面にはとりあえず喧嘩売るようなところも、いちいちカッコつけた芝居めいた台詞回しも、なんとなく受け付けない。彼が「お人好し」だという前提を共有していないとたぶんこの話を楽しむことはできないのだけど、私には彼の正義は偽善に見えた。相手の気持ちを考えた行動とか優しさではなくて、自分の正しさを押し付けた結果というか…そういう気に食わなさがある以上、感情移入が難しかったし、彼に好意を寄せる女の子たちが不思議でならなくて集中できなかった。
それから女性キャラの描き方も散々だ。彼女らには主体性がない。毎話いらないお色気シーンが入るのは全然我慢できるとしても、潜在的に徹底的に女の描き方が「客体」なのだ。
執拗な唇アップのカット。決め台詞とかいわゆる「悩殺フレーズ」をかますときに使うような微笑みのアップを通常会話で連発する。媚びた上目遣いの乱発。何か言葉を発するたびに主人公の名前を呼びまくる。
私達はつねに、「阿良々木の視点を通した彼女たち」を見せられている。
微笑みひとつとっても、彼女ら自身の心情を表すコードとして機能してはいなくて、彼女たちの性的魅力のコードとしてのみ消費されている。
そこがきつい。なによりもきつい。
カジュアルにこういう暴力的な可愛さとか萌えを楽しめるタイプならすごくいい、作品なのかもしれない。
以下は各セクションの感想。
・ひたぎクラブ
過去の自分と向き合うことによって問題が解決する、そういう性質の怪異であったということで、何が起こったんだかよくわからないなりにもまあ話の筋は通っていた。なぜ、傷ついたひたぎが阿良々木に説教され弱者呼ばわりされなきゃいけないのか?は謎だった。強気な女の子が虐げられることに対する性癖のようなものが臭ってくる演出だったので悪趣味〜と思った。
一番映像演出が凝っていたと思う。
・まよいマイマイ
一番泣けた。泣ける話だと思う。まよいちゃんは最高に都合の良いキャラクター。
・するがモンキー
レズというのは蔑称です。あと女性が恋愛対象っていうのと女好き(要するに惚れっぽい)っていうのは別の心理的性質です、そのへんの描き方が雑なので悲しくなった。それから「BL好き」っていうのもここと関連しつつもセンシティブな性質なので、それを全部同根みたいに盛っちゃうのはよろしくないかなあと。
本筋自体も納得行かない。必死に、戦場ヶ原に恋する気持ちを抑えたというのに、それでも根底の願いが怪異のせいで露呈してしまっただけなのに、ってここまででも十分可哀相なのに、さらに絶望して打ちのめすようなことを阿良々木はやってのけるし、その上「お前がそれを願うこと自体が悪だ」とでも言わんばかりに説教してくる。そんな酷い話はないし、それでいて阿良々木と仲良くしろだなんて言う戦場ヶ原も全くほんとにどうかしてる。人の心がないんだろうか。好きだった気持ちと折り合いがつかない以上問題の根本はなにひとつ解決しちゃいないのにハッピーエンドみたいな感じに描かれたのが釈然としない。
腕も切り落としたっていいって本人が言ってるのに、「お前はバスケを続けなきゃいけないんだから」みたいなことを言って無理やりそれを阻止した挙げ句結局バスケなんかできる身体にならなかっらんだから何をしたかったんだか本当に謎。薄っぺらいエゴでしかなかった。
見ていて一番きつかったし、当事者の気持ちなんか全くわからない人が書いた話だと思った。
・なでこスネイク
女の描写が度を越していて気持ち悪かった。
「助ける相手を間違えないでください」がド正論すぎて、「時と場合に構わずとにかく人を生かすことが正義」と思ってる阿良々木くんの頭の弱さがよくわかったのが印象的。
・つばさキャット
猫の口調がうざいなと思ったけど、誰よりもつばさの理解者だったという印象。
というかどう考えてもヒロインはつばさ。戦場ヶ原は噛ませヒロインとしか思えない。
恋心を抑えて身を引こうとした女の子に対して阿良々木は「お前は本音を言うのを猫に押し付けてる、弱い、お前の境遇でも頑張ってる人は他にいるはず」みたいなことを抜かしたんだからもうこっちは怒りが爆発した。それはいちばん、お前だけは言っちゃいけないセリフ。というかつばさちゃんは散々「あなたのことが好きだよ」ってフラグを立ててたじゃない。
どう考えても鈍感馬鹿なお前が悪い。