burn さんの感想・評価
3.9
物語 : 3.5
作画 : 3.5
声優 : 5.0
音楽 : 4.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
本番は第1話後半から
通して最後まで見て、人気作たる所以がわかった。
しかし、このアニメは話数を見続けるうちに段階的に面白くなっていくアニメであると思う。
と言うのは、第1話前半のエミリアとのボーイ・ミーツ・ガールな邂逅は本作の要となる部分なのだが、私にはどうにも凡庸な茶番に思えてしまったのだ。
私がもう煤けた大人になってしまっている、というだけかも知れないが、エミリアやスバルの自己犠牲的な思い遣り、素直さにどうにもすぐには共感できなかった。
実は、事前情報も何も見ていなかった私は最初1話真ん中(スバルとエミリアが貧民街に行くところ)で切ろうとした。本編1話冒頭に不穏な感じは演出されていたものの、私には変哲ない異世界召還ものに思え、この作品の本質であるダークファンタジー要素を見抜けなかったのだ。
しかし後日ネットで情報を聞きかじった私は、主要キャラ、主人公までが容赦なく残虐に殺されるアニメである本作を興味深く最後まで見ることになる。ものにもよるが、ダークでグロい作品は嗜好に当てはまるし、無能力で弱い主人公がなんとかして危機を切り抜ける展開は嫌いではない。
異世界に召還されました、特殊能力に目覚めて俺Tuee!俺無双!とか、安直に大量生産されている「なろう作品」など私も唾棄すべきものと考えるが、この作品はそれらのアンチテーゼである、俺Yoee!むしろニート!という持たざるもの主人公作品だ。
近頃はそのパターンも散見されてきたが、弱い主人公が勇気と策略と機知のみで強敵と渡り合い、切り抜けていく様はやはりなかなかに興味深い。
しかし「死に戻り」と言う能力はある意味チートである。バッドエンドになってもそれを無かったことにして時間を巻き戻し、悪い結果へと至った過程を自分だけ覚えていればいくらでも回避が可能だ。あらゆるパターンのバッドエンドがわかる、というのは=確実に最適な正解を見出だす、ということである。
ただ、それが「想定」ではなく「体験」であれば、自身の親しい者たちの残酷な死や、自分の無惨な死を何度も実際に経験してしまうことにもなり、心が壊れる可能性もあるわけだ。たしかに作中でスバルは廃人寸前までになってしまう。
だが18話以降、ただの高校生だった主人公スバルはそれを乗り越えて、英雄的にも運命を乗り越えていく。その点が本作の最大のカタルシスだ。
しかし仕方がないことかも知れないが、ダークで残虐な描写も多い本作はそこへ至るまで、トゥルーエンドへと至るまで視聴者もバッドエンドを見続けなければならないので、たいへん重く苦しい。一話完結ものであれば、一話ごとのカタルシス、爽快感が用意されているが、本作はそういった類いのものではない。このあたりは娯楽作品としてはジレンマだろう。私などは耐性があるが、人によっては視聴が難しいのではないか。
他、あえて難点を述べるとすると、やはり滑り出しにもうひと捻りが欲しかったところである。
だが後半までスバルと共に苦難に耐えれば、もう「Re.ゼロ」を「勤勉」に見るしかない。「怠惰」ではいられない。
(松岡禎丞の怪演が光っていたなぁ。ペテルギウスに憑依された「指」たちの声優さんらも上手かった)
うん、2期が楽しみだ。