オキシドール大魔神 さんの感想・評価
3.9
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
とんでもないラスト
監督の意向で、しんのすけたちが相手を暴力でねじ伏せるのは絵的にふさわしくないとのことで、本作のしんのすけたちが扱うカンフーはさほど本格的ではない。だからといってアクションがおざなりというわけではなく、容赦なく暴力を振るってくる相手を「ぷにぷに拳」という柔軟な拳法で対抗するアクションシーンは普通に面白い。まさしく「柔よく剛を制す」だ。
というように子供向け作品として程よいストーリーで進むのかと思えば、何を以って「正義」「悪」なのかというテーマにそこそこ切り込んでいく。今回の敵は利己的ではあるが邪悪ではない。倫理的道徳的には手放しで認められるような人ではないが、法律的には完全アウトとは言い難かった。そんな敵をストーリー中盤で力を得たヒロインがボコボコにする。力を得たヒロインは力に物を言わせて何事も暴力で解決するようになる。そしてしんのすけたちとぶつかって……。
ストーリー中盤で、防衛隊の中で誰よりも早く修業を始めたのに一番落ちこぼれになってしまったマサオが、終盤になって「力を得ることだけがすべてじゃない」ことに気付いた展開は良かった。防衛隊の中でいちばん優しいだろうマサオが力以外の解決法を見つけるのは良かった。
そして、賛否が分かれるであろう衝撃のラスト。敵も味方も住民もみーんなで「ジェンカ」を踊って大団円という超展開。最初こそ自分も面を食らったが、「クレヨンしんちゃん」という作品の作風を考えたら、暴力でぶつかったり主要キャラ達で考えに考え抜いて結論を導き出して意見をぶつけるとかよりは、よっぽど「らしい」展開だと思えた。突っ込もうと思えばいくらでも突っ込める場面ではある。そもそもどうやって「ジェンカ」を踊るように示し合わせたのか、つーかそんなことを了承させるのも無理だろうとか、踊ったことろで何になるんだとか、「正義」だ「悪」だというテーマに踏み込んでおいて投げっぱなしのようなこの展開はなんなんだとか。でも自分はこの超展開があまりにもばかばかしくて良かったと思えた。これまでの展開を投げっぱなしにするといえばそうなのだが、それが逆にいい意味でギャップになったと感じた。「正義」とか「悪」とか力を得るとかそんなことよりみんなで踊った方が楽しいじゃん!みたいな力技のラストに自分はいっそ清々しさすら感じた。
よって、秀作。
関根勤は声優としてはわりとうまかった。