fuushin さんの感想・評価
4.6
物語 : 5.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
あったあった。見つけたよ。
●EDの「君は天然色」を聴いて、押し入れを探してみたらあったんです。カセットテープが。
『B-EACH TIME L-ONG』(ビーチ・タイム・ロング)
1985年6月1日に発売された大滝詠一氏のベスト・アルバムです。
もう毎日、これを聴いて過ごしていました。
夏のペーパーバック、雨のウェンズデイ、Bachelor Girl. etc.
原作は知りませんが、脳内は、大滝氏の曲をBGMに、渋谷系タッチな絵柄で補正されまくっています。
もちろん、物語も楽しもうと思っています。
●「君は天然色」って、響け!ユーフォニアム2の6話で、印象的な演出で使われていましたね。
滝先生の心情をモノクロームで演出した北宇治高校の校内の様子が、この回から天然色で描かれていました。
うーん、やっぱりこれ、泣ける作品になりそうです。
というか、すでにもう見るたび泣いてますもん。
●最終話。うわっ~!て感じで、これには捻られました。
いきなりのギアチェンジは、ここまでのハートフルスロウから一気にアップテンポ。
ベタがベタに思えないほどの勢いで一気に駆け抜けて、こちら側の想像力を置いてけぼりにする展開。
中目黒と鎌倉の時間軸を紡いできた絶妙の演出に絆されてきた私は、最終話で心臓がハフハフしてしまいました。
姫ちゃんの戸惑う表情に対するそりゃそうだ感もありながら、全てを受け止めてしまう姫ちゃんの育ちの良さのそりゃそうだ感も見せつけられた父娘愛。
これにはシナリオの "品性" を感じました。いい脚本だなぁ。
父親が娘に仕事中の背中を見せる機会はあまりないことですし、内容や立場によっては話さない、話せないこともあるのかも知れません。
可久士が「姫にバレたらどーする!」と叫ぶのは、もしかしたら世の父親の代弁だったのかもしれませんが、私はそこに痛烈な風刺があったのだろうと感じました。
マイホームパパを演じようと努力する可久士の姿は、姫ちゃんにとっては普通のことなのでしょうが、二人の距離感が近いがゆえに、私自身はどうだったか、反して、子どもは私をどう見ていたのか、そう思ってしまいます。
それほどに姫ちゃんの仕草や笑顔や言葉が、私の胸を打ったということでしょう。
人は、失ってみて初めてその価値の代え難さに気づくものです。
{netabare} 妻を亡くすという {/netabare}自身の受け止めがたい慟哭と、姫ちゃんへの贖罪を、心のかくしごとにしていた可久士には、家屋に、家族に、母親に、そして姫ちゃんに、渾身の思いで寄り添おうとしていたのかもしれません。
家族の日常には、ベタにはベタの良さがありますし、日常ゆえに "気づきの難しさ" もあります。
得てして、私は後悔や自責の念を持つ場合が多いのですが、最後の最後に、{netabare} 姫ちゃんが漫画を描くシーンが描かれていたことで、{/netabare} 救われた感が半端なくありました。
本当にいい脚本だなぁ。
大人がどれだけ隠しても、子どもは、成長すれば親の歩いた道を見つけてしまうものです。
それは、父親には語れなくても、母親の知(血)が子どもに気づかせるものなのかもしれませんね。
父と母が娘に、妻と夫がそれぞれに、深い家族愛を示してくれた上質な一品でした。
長文を最後までお読みいただき、ありがとうございました。
本作が、皆さまに愛されますように。