STONE さんの感想・評価
3.3
物語 : 3.0
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 3.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
P.A.WORKSの始まりとなる作品
P.A.WORKSの初の元請制作作品で、随所に未熟な部分が感じられるものの、荒削りゆえの魅力も
感じる。
第1作目ということで後に繋がる基軸や指針のようなものがある。内容的には複数男女の
青春群像劇でこれはP.A.WORKSの最も得意とするジャンル。
舞台が富山県を想定したものになっているが、特定の地域を舞台とすることで作品にリアリティを
持たせるのはこれまた得意の手法。
特に富山県自体がP.A.WORKSの本社が存在する場所と言うこともあって、近隣も含めた北陸を
舞台にしたり、そこの町並みのモデルにした作品はその後も数多く作られている。
(「花咲くいろは」、「Another」、「グラスリップ」、「クロムクロ」)
同社とスタッフの絡みでもそういった要素はあるようでシリーズ構成は岡田 麿里氏だが、序盤で
ボーイミーツガール的出会いを果たした男女が結局結ばれずに終わる展開は、後に同じく
シリーズ構成を勤めた「凪のあすから」も似たような展開を遂げるし、監督の西村 純二氏の
故出﨑 統を思わせるような演出はこれまた後に監督を勤めた「グラスリップ」でも同じような
演出がなされている。
そう言えば本作はニワトリを飛べない鳥ということで、動けないキャラ達の比喩としての演出が
なされていたが、「グラスリップ」も結構ニワトリ推しをしていたような。
内容的には3人の男女による三角関係の恋愛ものだが、主人公の仲上 眞一郎を好きな安藤 愛子と
その彼氏の野伏 三代吉や、メインヒロインの一人の石動 乃絵の兄である石動 純がもう一人の
メインヒロインである湯浅 比呂美と付き合う展開を考えると広義的には六角関係か。
恋愛関係がぎくしゃくするのは多くのキャラが本心を表面に出せないことにあり、一人二人なら
ともかく過半数のキャラがそんなことをやっているのは、キャラによって事情があるにせよ、あまり
上手い話作りとは言えなさそう。
暗めのキャラが多い中、奔放な感の乃絵が異彩を放つ。その奔放さゆえに序盤は眞一郎を
翻弄するが、後半は逆に眞一郎の優柔不断さに振り回されており、本人も納得の別れとはいえ不憫な
感が。
この乃絵は不思議ちゃん的キャラだったが、本質的な異常さを感じさせるのはむしろ比呂美の方。
最終的には眞一郎と付き合う展開になったが、その重たい思いにはある種の気色悪さを感じる。
あえてぼかした表現や暗喩を多くした演出など、その意味するところの推察などが楽しかったり
するが、本質的なものは思春期の葛藤ぐらいで正直雰囲気アニメの域を出ていない印象。
逆に言えば暗めのシリアス恋愛もの雰囲気が好きな人は堪能できそう。
思えば本作が放映されたのは2008年だが、2000年代後半は「School Days」や
「WHITE ALBUM」など暗めの恋愛ものが今より多かったような気がする。
内容的には暗めのトーンが漂うのに、EDのデフォルメキャラは皆ニコニコしており、その
脳天気な感じが内容とは相反する感じで、なんだかおかしい。
2020/04/14